いまさら、私に何が出来るというのだ。
一人残った武道場でしばし考える。
刑部には、確かに言われたのだ。
記憶が無ければいけないことはないと・・・言った。
だが・・・1から作り直すことが・・・酷く私には辛いのだと・・・
なのに・・・あんなにも真田はまっすぐだった。
「石田殿が動かないのならば某は動きまする」
あんなにも、まっすぐに歩み始めている。
進んでいる。
どんな環境でも順応してしまうあいつには呆れたものだ。
私の心は未だ迷い語だというのに・・・。
「石田。」
「・・・孫市か・・・」
かけられた言葉にゆるりと目を見開く。
入り口に立つ孫市の姿は私を阻んだ。
あのときと同じで、私を阻んだ。
あの時と同じように見える。
もう、関係はないのだが
「警告・・・といえるかは分からないが、千代は多分記憶を夢で見ている。」
「・・・夢、だと・・・?」
「後天性の記憶もちという奴だな。
現に元地価、慶次、片倉小十郎、猿飛佐助
そして、おそらく・・・」
「千代も・・・だと・・?」
なのに、何故・・・この女は私に希望を持たせようとする・・・。
見れば、小さく、表情をゆがめてる
「だが、千代はあれは己ではないと泣いていた。」
「・・なに?」
「元親の証言だ。
いや、数人の証言を集めていた
そして分かったことが一つ。
後天性は・・・思い出したくない記憶からどんどんと記憶を思い出していく」
それでも良いと思うなら
千代のそばにいてやれ。
*-*闇の混乱*-*
私を思い出して欲しい・・・
だが・・・
千代に・・・泣いて欲しくは・・・ない
執筆日 20130610
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