しばらく、外から音と世界を遮断して、泣いていた。
目も痛いし、喉も痛い。
あぁ、私は愚かだから、
ゆるりっと、顔を上げたとき、まだそこには人の気配があった。
その人の気配も、私が落ち着いたと分かったのか、シャッと外から遮断される為にかけられていただろうカーテンを引いて、私のそばに来る
『かた、、くらせんせい・・』
小さく、その名を呼んだ。
そうすれば、固い表情から少し柔らかくなる。
「目、まっかだぞ」
『っないていたんだ・・仕方ないだろう・・・っ』
「だろうな、」
でも、どうしてか、
あんなことをわめき散らしたにもかかわらず、片倉殿は私にタオルを差し出す、
アイスノンがはさまれたタオルは冷たくて、気持ちが良い。
どうして、と、顔を上げれば、ぽんぽんっと頭が撫でられた。
「「お前」の中にいる仲間には、まだ悲しい思い出しか無いだけだ」
『え・・・?』
そして、言われた言葉に、きょとんとして、片倉殿の目を見る、
懐かしいものを思うかのように、そんな、深い深い、記憶を見るようなそんな目。
ぎぃっと、ベットに腰掛けた片倉殿はそのまま思い出すかのように「俺の時も酷かった」とうわごとのように呟いた。
俺の、時も?
「俺の一番初めの夢は、地獄絵図だ。
多くの仲間が倒れ、その中で政宗様・・・いや、お前が思い出してるか分からないが、まぁ、政宗様がその中にたたずんで、静かに泣いていた。」
『・・・』
「俺はそのとき、酷く苦しかっただよ、。
自分がおかれている状況と、酷く、その人が儚げで。
だがな、死ぬ前にはお前の子を抱かせてもらった。
死んだ日も、多くの人に囲まれててな、
あぁ、俺は民に好かれていたんだと、嬉しくなったもんだぜ」
あぁ、そういうことか・・・
私は、元々記憶がある、
だけど記憶が元々無いものは、夢に出て来る。
そういうことなんだろう。
だから、そんなことをいうんだ。
すべて、私は知っているのに・・・
「徳川家康。」
『・・・違う。』
「あぁ、そうだ、お前はソレで良い。
「徳川家康」というお前はもう死んでて『徳川千代』としての人生が始まってんだ。
お前の人生を覆すような、そんな残酷な記憶だと思うんなら捨てちまえ、
なんなら政宗様たちには俺がお前に迷惑をかけねぇように言っておく」
『・・・あぁ・・・』
でも、片倉殿ほど、優しくて残酷なものは無い
あぁ、本当に忘れていたら・・どれだけ・・楽だったんだろうか・・・
*-*-*光の混乱*-*-*
《片倉先生》
(なんだ?)
《ありがとう、大分、楽になりました》
(そうか。そりゃよかったな)
執筆日 20130507
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