『あ、あの・・・』
どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう・・・っ
持たされた紙コップの中からは甘い香りがただよい、温かくてぽかぽかしてるが、でもこの状況とは裏腹ですごく逃げたい。
だが、いまさら教室に戻ったところでもう二時間目は始まっているんだ。
うぅっと、小さくなりながら裏庭のベンチに座って下を向いていた。
ストンっとその横に当たり前のように半兵衛殿が座る。
かんべんしてくれ・・・。
第一に、今は教師と生徒なのだ。
昔は上司と部下だったが・・あぁ・・・もう・・・どうしたらいい・・・?
逃げたい、本気で・・・今すぐに、気まずすぎる・・・
「あまり固くなることはないよ、千代君。」
『は、はい。』
でも、固くならない以外のことが出来るのであれば、私はその方法が知りたいと思う。
あぁ、でも・・・
『(半兵衛殿は・・・かわらないな・・・)』
豊臣に入ったころ・・・上層部という圧力に負けて泣いていたとき、半兵衛殿は私の元にきて甘い物をくれた。
懐かしい・・・。
そう思ったらまた、涙が流れてくる。
「どうかしたの? いじめられた?」
『ちが、う・・・っ』
ポンポンと優しく頭が撫でられる。
これも、同じだ。
人気の無い中庭に、二人だけで、
誰も見てない、涙が出る。
「僕に話せそうかな?」
その質問に、フルフルと首を横に振った。
半兵衛殿も私が記憶が無いと知っているから・・・こんなにもやさしいのだろう。
だから・・・だから・・・いえないのだ・・・
「うん、うん、大丈夫だよ。
だから、今は泣きなさい。」
『で、も・・・ っ』
「大丈夫、今は僕しかいないから」
手からするりっと紙コップがぬかれて、優しく抱きしめられる。
温かい・・・あぁ、でも・・・
『(このぬくもりを奪ったのは・・・っ)』
私なんだ・・・
秀吉殿を殺し、半兵衛殿は狂ってしまったと、歩にきいた
追い詰めたのは、私なのだ
なのに・・・
『あ、なたは・・・』
「うん、なに?」
『酷い、残酷な、人だ・・・っ』
こんなにも優しくて、温かい
*-*-*光の思い*-*-*
でも、私は、
貴方と、貴方の大切な人と・・・その部下を
三成を・・・
殺した咎人なんだ
執筆日 0530
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