『なぁ、孫市・・・質問なのだが・・・』

「なんだ?」

『何故・・・お前は私の元にいてくれるんだ?』


これは、絆を切るという行為に、繋がると思う。
それでも私は構わないと思った。

孫市も・・・過去の私に重ねているんだから


たまに来る巫殿・・・いや、鶴姫殿もそうだ。
「あの頃」から二人は姉妹のように仲がよく、それは今も・・・

なのに、今は私が孫市を独占してしまっている。
それは・・・



『鶴姫殿もそうだ、二人はとても仲が良い。
 私の元に来るよりも、彼女の元に居た方が孫市も楽しいだろう?』



私の裏切り。
それでも良い。


私の望んだ泰平の世で、皆が笑って過ごせるのならば、私は、儂は別に独りでも構わない。

かやの外で良い。


私なんて、放っておけばいい。


「・・・っカラスが・・・」

『え?』

「馬鹿だ、お前は、」

『っ失礼な、私は・・っ』






「我等が千代の元に居たい、
 我等は、・・っ私は「お前」から目を離し、「お前」は消えたと、言っただろうっ!」




なのに、なんて酷いことを言うんだ。

言葉が遮られ、続けられた言葉に目を見開く。
孫市の瞳は、揺れていた

こんな表情をさせているのは・・・私なのか・・・



私が・・・



『っ』

「千代!?」



走り出す。
限界だった。

涙がポロポロと溢れ出し、止まらない


泣いてる、なんて、記憶があると言っているようなものじゃないか。


見られたくない、


走る走る。



ドンッ


だが、それがいけなかった。






『す、みませ・・』

「おっと、・・・あれ、キミは」




何故、何故だ?

ぶつかり、転びそうになったらその手は取られた
そしてそのまま受け止められ、抱きしめられる。


聞きなれた声に、ゆるりっと顔を上げれば・・・





『っ・・先生・・』



雪のように、白い髪・・・

儚いその人だった。


執筆日 20130530



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