「また武田から荷が届いているぞ。」
「ふふ、お館様ったらまだおなごかおのこかもわからぬというのに」
いくつかの風呂敷を持った三成殿が音もなく私の室へと入ってきた。
お館様が開いてくれた祝宴。
晴れてより、元々捨てていた真田の姓を正式に石田と改めたのだ。
名も、麒麟から…幸に戻したのだが…。
けれど、あぁ、これはこれでもいいと思ってしまうのだ。
今は武田よりあまり遠くない旧真田の地にて新たな屋敷を構え母上と幾人かの女中。
それから親のない子供たちをここへと住まわせている、所詮寺子屋のようなものだ。
「いまだに信じられん。」
『私も信じられませぬ、ややを孕むなど考えもしなかった。』
けれど、なぜ大阪ではなくこちらにいるかといえばこの身体には三成殿とのややがあり、さっそく私一人での体ではなくなったから…
隣にすわり、するりと腹をなでる三成殿の手はひどく優しい。
「顔を上げろ、幸。」
『ふふ、三成殿に幸と呼ばれるのはひどくくずくったいです。』
「そのうち慣れる。」
その手がするするとほほまで滑り、目と目が合う。
翡翠の瞳が酷く優しくてゆっくりと目を閉じた
「「お嬢!/幸!」」
けれど、スパン!っと思いっきり障子が開いて入ってくる二つの影。
思わず目を見開いてその方向を見れば息を切らせた佐助と政宗殿の姿がある。
だが、横でブチリっと何かが切れる音
「きぃさぁまぁらぁ…」
そして、すっと横から消える銀色。
きょとんっとして顔を上げればひくりっと口元がひきつってしまった。
「表へ出ろ!残滅してやる!!」
久しぶりに見た、三成殿の凶王状態
そしてそれを見て苦笑いをしてしまう私に対し、刃はつぶしたとはいえ武器を構えた二人をみて、それこそうらやましくなる。
「大体ねぇ!普通祝宴も上げずに孕ませる旦那はいないでしょうが!」
「俺のライバルを獲った罪は重いぜ!YouSee?」
「幸は私の妻だ!それこそ幸の母にも武田信玄公にも許可はもらっただろう!」
「それとこれとは違うでしょ!」
そんなことを言いながらバタバタと飛び出していった3人を見て微笑む。
あぁ、けれど、
こんなものもいいかもしれませぬ
*-*唯一の場所*-*
『みつな、っあ』
盆をもって歩く。
道場で手合わせをしている彼らの金属の音を聞いてほほがゆるんだが、ぐらりっと視界が揺れて、体が傾いた。
「っ!!幸!!」
けれど、倒れる前に腹に負担がかからないように抱きしめられた。
それにホッとしてしまったが、
「何をやっている!室にこもっていろと言っただろう!」
『気がおかしくなってしまいまする!
私とて体を動かしたいのでございます!』
「貴様、もう一人の体ではないと自分でも自覚しているだろ!!」
「…なんだかんだ言って、あの二人ってお似合い…なのかな」
「チッ…つまんねぇ」
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遅くなりすいません!
恋仲吹っ飛ばして夫婦になっちゃいました、でも三成endだとこんな感じなんですよね。
お気に召してくれれば幸いです。
フリリクありがとうございました!
執筆日 20130909