『み、三成殿、あの…っ』
「舌をかむぞ、黙っていろ。」
『ど、どこに…っ』
いまだ、慣れていない着物が重い。
なのにもかかわらず、三成殿の前に座らせられ騎乗。
しかもかなりの速さで進むものだから三成殿にしがみつくほか私には道がない
三成殿に似て早い馬だ。
あぁ、けれど…
『(温かい。)』
ひどくこの場所が心地いい。
一度は失い、そして再び手に入れた私の大切な場所。
『え…』
連れてこられたのは、懐かしい場所だった。
あれより一度も戻ってきていない場所。
まだ、「真田幸」として有った場所だ。
なによりも、家族としてそこに居たかった。
「許しを、もらうものなのだろう。」
『あ、歩けまする!三成殿!!』
先に馬から降りた三成殿は簡単に私を横抱きにして歩き始める。
確かに裸足ではあるが、それでも昔は走り回っていたのだ、着物だってはしたないと言われない限りは抱えて歩くのに…
「石田の旦那?・・っお嬢!?」
それから城門があいたからだろう、それでか駆け寄ってきたのは赤い衣をまとった佐助で、
私と三成殿を見てぎょっとしていたけれど、ふわりと笑った。
「おかえりなさい、お嬢。
大将も待ってるから…石田の旦那も大将が来るかもって予感はしてたんだよ。」
それから、そういって…
私は三成殿に抱えられたまま三成殿は私を抱えたまま佐助の後に続いた。
執筆日 20130909