「ねぇ、ちゃんと食べよう?」
『…』
「だいじょうぶ、お館様は信用できる人だから、ね?」
大将はうまく真田家をまとめてこの小さなお姫様を引き取ってきた。
とはいったものの…大将は執務をしなくちゃいけないし、誰にもなついていないこの子は誰の言うことも聞かないし誰も近づけない。
近づこうするものなら逃げ回って迷子になったり、まだ扱えない婆娑羅の力を暴走させてしまったり…
だから、俺様がそばにずっといる状態で…
それでも、外に出ようとしないし、部屋の中でボーっとしていることのほうが多くて…言わなくちゃ何にもでき兄ぐらい…心が壊れてて…。
『おねがい…ひとりにして…』
「だーめ、食べないとひとりにしたげない。」
『いら、ないの…いらない…』
独りになることに慣れてしまっているんだろう
だから他人が怖くて、寄せ付けたくない。
俺様と一緒。
両手で耳を防いで、ふるふると首を横に振る。
でも、ここに来てから何も食べてない、
そろそろ、本当にやばいとおもう。
しのびならともかく…まだ小さい子供だ。
「(小さな子が…喜ぶもの…)」
そう考えて、ふと思いつくのは甘いもの。
しょせん、甘味というものだ。
だけど、今までそんなもの作ったことなくて…
「(ぶかっこうになっちゃったけど…)」
あの子は喜んでくれるだろうか。
なんておもっていつもの様に天井からではなく普通に廊下を通って部屋へと行く。
一言、言ってからはいればぞっとした。
「いわんこっちゃない!!」
ぐったりとして畳の上に転がっている小さな体。
荒い息をはいて、でもその息も細くて、
生きているのを確かめるように掻き抱けば、たしかに生きていることに安心して…
『う、ぅ…』
「しっかりするんだよ、大丈夫。」
まだ一度も切っていない髪であまり顔色はわからなかったが手で払えば日に焼けていない肌は真っ白で…
体温は高いほうだ、むしろ…高すぎる。
『いい…いい・・・ほぅって・・・おいて』
「おバカさん。
ほら、ゆっくりでいいからこれを飲んで。」
飲みやすいように肩に頭を乗せて、口元に水を持っていく、
飲みたくないのか俺様の肩に顔をうずめてしまうけど、ポンポンと頭をなでて諭して、軽くこちらへ向いたときに固定して少しずつ飲ませてゆく。
少しずつ水が減っていくけれどするすると飲みきれない水がこぼれていく。
『っけほっ、う・・っ』
「あ、ごめ、」
『いい、いい、いら、ない…っ』
「いらないじゃない、このままじゃしんじゃうでしょ。」
『弁丸がしんだって、だれも』
「俺様は悲しい。」
『…っ』
唇はカサカサで、それがすごい痛々しくて、
器官入ってしまったらしく急き込んでしまったその背をなでて、最悪のことを言えばそれでいいと…いったから…
でも、この子の笑顔が見たいと、いう俺様の重いっていうか…
感情をすてたのにあっさり取り戻されちゃって、
「生きよう?ね? 絶対に独りにはしないから。」
『…どうして』
「俺様に似てるんだ。弁丸様は、似てるんだ、だから…」
もう悲しまなくていい、泣いてもいい、すがってもいい。
だから、生きて、
ぽんぽんっと小さな体を抱きしめて何度も何度もそういった、
執筆日 20130826