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確かに、私は、知っていた。
家康から、あんなことを言われたら考えない方がおかしいんだ。
予期していたのに・・・対応できなくて・・・結局・・・たくさんの人が傷ついて行く。
「っゲホ・・ゴホっ!」
『っ半兵衛様!』
そして、隣で崩れ落ちた白。
ぎょっとして、声を張り上げてしまう。
こんなこと、してはいけないのに、
半兵衛様が咳き込みながら私を睨んだ。
はっとして、下唇をかむ。
軍師が、指示を出すものが、動揺すればその動揺は軍全体に広がってしまう。
注意として、最初に言われたのだ。
でも、どうしたらいいかなんてわかんない。
何百人の命なんて、分からない。
一人救うのと百人救うの、
どっちを優先する、なんて、決まってて
『っ騎馬隊出撃!! その後、騎馬隊の進路を妨げないように銃器、弓矢隊も続け!!
先にいる特攻軍を、秀吉様を守れ!!』
声を張り上げる、
どうにか、どうにか半兵衛様を助けたい、
お願い、お願い、変なことなんて、急なことなんておきないで!!
軍が出撃したのを確認して、すぐにしゃがみこむ、
いまだに咳き込む半兵衛様の手や、床には赤い血溜まり。
むせ返るような、血の匂い。
『っ戻りましょう、駄目です、これ以上はっ』
「っ秀吉、秀吉が戦線に居るんだよ・・・なのに、僕だけ」
『大丈夫、秀吉様なら絶対にお戻りになられますから、だから、今はっ』
これ以上は、ダメだ。
半兵衛様にこれ以上、無理をさせてしまったら・・・
肩に置いた手に、そっと、血に濡れた手が触れる。
「いい・・・僕は、軍人だ。」
『!』
「ここで、死んでも良い・・・だから・・・』
最期まで、ここに居させてくれ。
彼が吐き出したのは、
己の死を知る、其れで。
彼の史実の、一つだった。
あぁ、やっぱり、ここは・・・
少しだけ、私の知る世界のようだ。
執筆日 20130312
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