もうすぐ冬が終わる。
俺の体調がよくなるにつれて
病院で知り合った女の子なまえちゃんは
逆に悪化していくばかりだった。

「精市くん、私死んじゃうんだって」

久しぶりに話せると思ったのに
彼女の一声はそれだった。

「急にどうしたの?」


「昨日ね、お母さんが泣きながら
  先生と話してるところみちゃったんだ」

以前のなまえちゃんでは考えられないような様子だ。
まるで死ぬのを待っているかのような。

「なにかしたいことはある?」

俺のできる程度のことで。
そう付け加えて言ってみると

「精市くんに抱きしめて欲しい」

本当に?と聞けば
うんと頷いてくれたので
彼女を思いきり抱きしめた。

「泣いてるの?」

絶対に泣いちゃだめだと思っていたのに
無意識のうちに涙が溢れていた。


「いなくならないで、俺の前から消えないで。
  ずっとそばにいて、俺は・・・」

「私が死んでも精市くんが私の分まで強く生きてくれるなら
  ずっとそばにいるよ」

「本当に?」


「約束する、でも最後に精市くんが
  寂しくならないように魔法をかけないとね」

なまえちゃんは俺の耳元で
囁くようにいうと唇に触れる
だけの優しいキスをくれた。

「これじゃあ、逆に寂しくなっちゃうよ」


「本当は私がしたかっただけ」


「あのね、なまえちゃん・・」


「ごめんもういかなきゃ」


「そっ・・か、またね」


「ばいばい」

これが彼女と交わした
最後の言葉。
またねと言わずにばいばいと
言ったのはもう会えないことを
知っていたからなのだろうか。


数週間後彼女が亡くなったと聞いた。
何年先もずっと
なまえちゃんに想いを
告げれなかったことと
少しの時間をこんなにも
大切だと感じたことを
彼女の命日に思い出すだろう。

「また逢えたらいいな」

風が穏やかに吹いた。
まるで彼女が「そうだね」というように。


世界が君を殺した
(俺のそばにずっといるのに)



    

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -