カモシカ…骨…もやし…


三角座りをしながら忍たまどもの足を順番に睨む。



「何やってんの?」


突如かけられた声。振りむくと目をくりっとさせた何とも可愛いらしい黒髪の少年が立っていた。

「出たなっ!女の子の敵、久々知兵助!」
「何それ。俺なまえに何かしたっけ?」
「してるよっ!現在進行形だよっ」
「え、何したの俺?」
「…むぅ。その細い体、くりっとした大きな瞳、女装したら絶対私より可愛いじゃんかっ!」
「…?」
「首を傾げるな!可愛いんじゃ!」


この男、ほんと女の子…っていうか私の敵だ。私がしても、こんなふうにならないぞ。


「…」
「何よ」
「いや、もしかしてだけど体重増えたの?」
「!」


何こいつ!?デリカシーがなさすぎる!
普通女の子にそんなこと言いますか。いや、言いません。(反語だよ)


「大丈夫だよ。体重増えたからって見ためは全然変わってないよ」
「…どーせ私は元からデブだよ」
「そうじゃなくて。なまえは自分が思ってるより痩せてるよ」
「私着痩せするタイプなの。この装束の下はど偉いことになってんだから。」


そう、普段はめったに足出さないから分かんないだろうけど、私の足は大根並みなんだからな!…って、自分で言ってて悲しくなった。


「…私、今日からダイエットするよ」
「え、なまえが?」
「どういう意味よ」


そりゃ私、毎日忍たまと同じくらい、もしくはそれ以上に食べてるけど。私だってやればできるの。絶対痩せてカモシカ足になってやる!



「じゃ、そゆことだから、今日から私、食堂に近寄らないことにする」
「え、何も食べないつもり!?」
「そうよ。私、本気なんだから」
「でも、食べないとお腹空くよ。せめて豆腐だけでも食べなよ」
「豆腐食べてもお腹の減りは変わらないよ」


この、豆腐小僧が。


「とにかく、私、絶対何も食べない!決めたから!」


そう言って私は腕を上げて立ち上がる。いわゆる決めポーズね。


「…」


兵助の方を見ると、何故か落ちこんでる様子。


「何よ。私がダイエットしても兵助には関係ないんじゃないの?」
「…いや、関係ある」


深刻な表情でそう答えた兵助は、どこから取り出したのか分からない豆腐を私につきつけた。


「ほら、食べてよ」
「え、何この子っ!?怖いよ」
「…俺、なまえが豆腐を美味しそうに食べてるとこを見るのが好きなんだ!」


豆腐を押し付けつつ、はっきりと言う兵助。私は思わずたじろいだ。


「ってゆうか、俺、豆腐じゃなくてもなまえが美味しそうに食べてる姿が好きだ!だから、ダイエットなんかするなよ!」



私の目を真っすぐに見て叫ばれた言葉。


…分かってるよ。兵助の好きに深い意味はないってことは。しかし私の顔は熱が集中してきていて、兵助から見たら真っ赤になってると思う。


「…あ、その、なまえ?」


兵助も自分の言った言葉を考えなおしたのか、少し顔が赤く染まってきている。


お互い、何故か顔を赤くしたまま沈黙が続く。



「…」
「…」
「……」
「……」
「…私、ダイエットやめるよ」
「へっ?」
「だって私、食べるの好きだし。それに、」
「それに?」
「兵助もそんな私が好きなんだしね」


にっと笑って言ってやる。そして照れた兵助がどうしようもなく可愛くていらっとしたので一発殴ってやった。



いっぱい食べる君が好き





「俺、なまえが食べても太らない方法思いついた」
「え、何っ?」
「体育委員会に入ってもっと体を動かしたらいいんだよ」
「痩せる前に倒れるわ!」





――――――――――


某CMから。
食べるのってやめられないよね。そのくせ動かないから体重がえらいことに…