サニーは苦労人トリオを作る
その一
 


とある昼下がり。
とある本丸ではひとりの刀剣男士と審神者が敷地内で追いかけっこをしていた。
刀剣男士の名は加州清光。本人の顕現時の台詞にもあるとおり、扱いにくい刀である。しかし幕末の天才、沖田総司により大切に使われた刀でもある。主から愛されることに固執し、審神者の間では「面倒ったらありゃしない」として有名だ。
そんな清光も、本丸が違えば性格も趣向も変わる。審神者の霊力・性格・生活環境などによって変化するのだが、ここの本丸の清光というと。

「全く主に対して愛することを強制してないんだよなぁ……。」
「薬研くん?どうかしたの?」
「いや、清光は愛を求めてないなと思ってさ。ほら。」

お茶を飲む薬研に言われ、燭台切光忠は薬研の指先を見た。この部屋からは本丸の庭が見渡せ、庭では清光と審神者が走り回っている。額に手を当て呆れるように溜息をつくと、薬研と目が合いまた溜息をついた。もちろん薬研も同じである。
燭台切光忠は伊達政宗公の刀で格好良さにこだわりを持っている。だから自分の仕える主が女性であることに初めはちょっとした拒絶感を持っていた。普段の審神者は、仕事をサボりたがり、部屋に引きこもりがちな、格好良さとは全く関係のない人だ。それでも光忠が今まで、そしてこれからも仕えるのには彼女の霊力からは、見た様子とは逆の強いものが伝わるからだった。強い決意、熱意、その他諸々。
清光は恐らく表には全く出さない、審神者の刀剣男士に対する大きなものによって、愛へのこだわりがなくなっているのだろう。それほど彼女の何かは大きい。
まあ光忠が決定的に彼女を主と認める出来事があるのだが、その話はまた今度。

とにかく今は彼らのどうしようもない争いを止めなければ、と本丸のおかんは立ち上がった。