サニーは苦労人トリオを作る
その二
 


「主!清光くん!いい加減にしてくれるかな。」
「光忠!いいところに来た!清光を近侍にするって主命出してもやってくれないから取っ捕まえてやろうと思ってるんだけど手伝って!」
「嫌だって言ってんじゃん!主命なら長谷部に任せてよー……。」
「主、とりあえず落ち着いて話そうか。」

ギラリと笑った光忠のその完璧な笑みに文句タラタラの二人は固まった。打撃が太刀トップレベルの人に殴られるのは御免だからだ。それに審神者の方は一度、いや三度ほどそれを経験している。大人しく部屋に上がって来た二人は薬研に救いを求めるように話し始めた。

「あのね、薬研。私は清光が近侍がいいって言うのに……清光全然聞いてくれない!初期刀だからって言うわけじゃなくて実力を見越して近侍にしようとしてるのに……。」
「ちょっと、俺が悪いみたいに言わないで。主は俺を近侍にすると長谷部が苦手な書類ばっかやらせるじゃん。あれ目が痛くなるし嫌なんだもん。加えて身の回りの世話までしろとか言われるし……とにかく俺は絶対近侍やらないからね!」

どちらも言い分も正しいと言いたい薬研だったが、自分も近侍をして散々な目にあったことは数え切れない。審神者はまともに働けば書類などなんてことないのだがいかんせんサボり魔だ。どうせ締め切りが近いのだろう。
三度溜息をついた薬研は落ち着いた口調で、大将、と呼んだ。

「まあ大将の言い分もよく分かる。だがな、また締め切り近いからって優秀な清光にやらせようとするのは駄目だ。時には自分で責任を負わねぇと成長しないぜ。」
「うぅ……ずびばぜん……。」
「そんなわけで清光を追いかけるのはやめてくれるか?」
「うん、やめる……。薬研に怒られるの嫌だ……。」

先程までの騒ぎが一体なんだったのか、薬研にぴしゃりと言われた審神者は随分精神的に子供になっている。涙もぽろぽろ溢れている。清光は審神者の涙を見て顔を歪めた後、ごめんね、と小さな声で言った。

「清光も清光だったし、これでもういいだろ。もし本当に書類が間に合わないなら俺っちが手伝ってやるさ。」
「…………薬研ー!!」

薬研に抱きつく審神者は完全に薬研に堕ちている。さすがは短刀じゃない短刀。

「で、どのくらい終わってないんだ?」
「えーっと、三ヶ月前の遠征の報告からこっちの分かな。明日提出だから、急がないといけなくて……。」


とある昼下がり。
とある本丸では、三人の刀剣男士の声が響き渡った。刀剣男士の名は、加州清光、薬研藤四郎、燭台切光忠。
三人は最も審神者と深い関係を持つ、ザ・苦労人である。