サニーは花丸になれなかった
 


twitterのうちの本丸が花丸にならなかった理由はなんだ的なツイートより派生。
この話だけサニーの世界観無視です。
ごめんなさい!!


▽△▽


本丸にテレビという文明の力が存在するのはもう至極当然のことである。2205年を迎えたその時から刀剣男士達を戦わせる運命にあって、付喪神を顕現するやら時代を遡るやらSF映画の頂点的なことが出来るのにテレビはないなどあり得るはずもない。毎週放送される審神者の時代のテレビ内容は古き時代から生きてきた刀剣にも刺さるものがあるらしく、自分達が活躍していた時代ものや最新の恋愛ドラマまでワクワクドキドキ楽しんでいる。
そんな中、刀剣乱舞-花丸-というアニメは我が本丸でも話題沸騰となり、月曜の朝早くの大広間のテレビ前は賑やかだった。

「あーやっぱ、OPの俺可愛くない?踊ってるし。この本丸は刀揃うの早いなー……。」
「確かにな。清光が最初ってのは同じだが、6話で三日月が来るとは運が良い。あとこの俺っちも薬作ってんだな。」
「僕と長谷部くんの出番は結構多いかも。ていうか主お世話係ってちょっと格好良くないね。」
「そもそもうちにはそんな係ないしな。まあ主は世話するよりされる側だが。」
「ちょっとー!なに古株がテレビ占拠してんの、俺達にも見せてくださいよーって。」
「鯰尾、見えない。」
「鯰尾兄さん見えません!」
「あの……み、見えません、鯰尾兄さん。」

清光や薬研達が見ていたテレビの前に鯰尾が立ったことで自動的に見ていた人は見えなくなったから鯰尾の「古株だけずるいぜ」という主張は押されたものの、兄弟達からは自分達も見えませんと静かに抗議が上がった。えーそんなに言わないでよと鯰尾は言いつつも大人しく骨喰の横に座った。
日曜の夜遅くに放送されている花丸は、夜の間に見る勢と朝起きて見る勢に分かれており、大太刀とサニーの呑んだくれ組が夜で、粟田口や清光の働き者組が朝見ている。粟田口は夜見たくてもいち兄に笑顔で止められるので早く寝て早く起きるしかないのだが。そんなわけでこの秋は忙しいはずの月曜早朝は別の本丸のアニメを見るというとても穏やかな時間になっていた。自分の知らない自分が画面の中にいることや知らない刀がいることの楽しみはなかなか味わえないものである。短刀達は凄い凄いと毎度楽しいそうだ。あとはいち兄来なくて可哀想と泣いている。

「そういやさ、このアニメの本丸ってこうお手本にした本丸があるのかな?」
「そうだなー……、ありそうではあるがそうなるとどこの本丸だろうな。少なくとも俺達の本丸ではないだろうし。そういう清光はどう思うんだ。」
「あったら羨ましいとは思うけど、ほら、うちのサニーは絶対テレビ無理じゃん?取材とか応じれないタイプだし。」

清光は日々ごろごろと過ごしているやる気のない主を思い出して溜息をついた。

「そもそもこの話書き始めたのは6話終了後くらいなのに放置して7話のAWT48にやられて悶えてとうとう8・9・10話も過ぎてたことに今気付いた、阿呆サニーの本丸が花丸になる訳ないよね。」
「それは作者の話だぜ……。」

薬研がしかめっ面で清光にそういうとそれに清光は肩を竦めて、多分どんなでもうちの本丸は無理だよと言った。初期刀の呆れ返っている様子を見て、はあぁぁ、と溜息をついた薬研だが実は薬研も無理だろう派である。本丸の中で誰よりも主を見ているせいか、あのだるだるで刀剣から尊敬はされていない姿はとてもテレビに映せるものではない。アニメ化は花丸ともうひとつあるがもうひとつの方も無理だろう。そもそもうちは刀の入手率が以上に低いのである。アニメのように三日月がすぐに来るような運はかけらもない。花丸になれない理由ならいくらでもある気がする、と自分の本丸の他人に自慢出来ない部分ばかり浮かんできて頭が痛かった。
そんな薬研も7話のAWT48には胸をときめかせていた。何せアニメの薬研に兄が来た時の思いは自分も抱いていたもので、あんな風に楽しく歌や踊りを披露することは愛染的に言えば祭りだ祭りだ!なのである。だから、審神者が起きて来たら今いる粟田口のメンバーであいどるやろう、と声をかけるつもりだった。

「んー、寝た寝た……。ん?何みんなで見てんの?」
「主さま!おはようございます。」
「主、おはよう。」
「おはよ、主。」

テレビのある部屋に入って来た寝起きの審神者はみんなに挨拶を返すと、テレビ画面を見ておお、と声をあげた。審神者も花丸のがっつり視聴者である。

「昨日見たやつ、皆で早速か。あぁ、槍の話ね。うちは槍いないからなぁ。」
「槍のお方が来たら……、お守りを差し上げよう、と、思います!」
「そっか、あげればいいよ。喜ばない人はいないと思うし。槍の人は優しいからね。」

五虎退が審神者にそう言うと、審神者はぽんぽんと頭を撫でた。その表情は母性に溢れたものである。一期一振がいれば即刻斬られるようなデレデレさも含んでいたが。薬研は弟がひとしきり話し終わった後、主のところへ行き、そのあと話そうなんて思っていたのだが、審神者が薬研の姿を見つけるとギラリ、と目の色を変えた。その時のことを薬研はのちに「あれはまるで獣だぜ……」と語ることになる。

「やーげんさん!」
「な、なんだ?大将。」
「とりあえずこれ着ようか。」
「はっ?」

審神者が取り出したのはまるで乱が着るようなリボンのついた彩色豊かなフリフリの衣装だった。ひっ、と薬研らしくない声が聞こえて周りはなんだなんだと騒ぎ始める。

「た、大将、俺は男だぞ……!」
「だぁーいじょうぶ。男もアイドルやってるし、こんなフリフリ着てるってば。羽根つき衣装なんて普通よ。」
「いやっ、俺はいい!もっと平野とかの方がいいだろ!」
「こういうのは普段まるで合わないような人が着るからいいんだって。薬研はピッタリでしょう?口調も性格も男前だけど、背丈と見た目は子どもに近いんだから。」
「大将……!!」

光忠はそれを見て初めは止めようとしたが、止めた瞬間あれが自分に回って来るのではないかと思い、動けなかった。周りもどうやら同じようで、主の満面の笑みが恐怖にしか捉えられなかった。そして、心の中で薬研の冥福を祈った。

「ね?これは主命、薬研。大人しく着ようね?」
「嫌だーーー!!!」

朝から響いた薬研の悲鳴に、お覚悟しに来た一期は悲惨な光景に頭を抱えた。


20161212
まるで内容が最初からズレてる。薬研には可愛い衣装もありだと思います!



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