(入学篇)

「あっ青田!」
「…なに?」


昼休み。学食へ向かう最中の廊下で、後ろから誰かに呼ばれ振り返る。
それはよく見ると同じクラスの男子だった。
追いついた(名前を忘れた)男子は私の右腕を掴んで、クラスに引き戻そうとする。

「ちょっ!ちょっと来てくんねーかな!」
「はあ?なんで」
「頼む頼むって!あれ止められるの青田くらいしかいねーよ!」

7月になってようやく彼らは私の事を青田と呼びすてするようになった。
まあ、いまだ私のイメージの固定観念があるようだけど。

「私まだご飯…食べてない」
「あー俺達が奢りますから!お願い!」
「はぁ…」

頭を触りながらさっきまでの道をUターンしたら、男子が「こっちこっち!」と急かすように人混みを掻き分けた。
1Zに戻ると、教室の中心で誰かが乱闘しているのが見える。それを回りが取り囲むように見ている。どけどけ。

「何?喧嘩?」
「あ、うん…来島さんと先輩が」
「女同士って一番醜いよねぇ」
「(そう言いながら助けもしないお前が一番醜い女だよ)…あー。えっと、止めればいいの?」
「俺達男子だし、力ずくで止めたらもっと事が悪くなりそうだし…」

クラス全員から視線が集まって、私は輪の中心に入り込んだ。
来島さんとケバい先輩が取っ組み合いをしている。おいおいパンツ見えてるぞ。

「ちょっと二人ともやめたら?みっともない」
「はな…せよっ!」
「テメーがはなせッスよ!」
「おい、」
「第一アンタに用はないの!」
「どーせしょうもない用なんでしょう!」
「おい、」
「はぁ!?テメーに関係ねーだろ!」
「先輩だからって付け上がってんじゃねーぞ!」
「おい!」
「青田くんの妹出せよ!」
「いねーよ!」
「ここにいるわァァァァァ!」
「「うおっ」」


はぁ、はぁ…と息を荒くさせながら私は両者を睨んだ。


「で、なんだよ。私に用があるんでしょ?」
「あなたが青田くんの妹よね?」
「そうだけど」
「お願いがあるの。私と、アドレス交換してって青田くんに頼んで!」
「は?なんで私がそんな小賢しいことしなきゃいけないの。テメーでやれよ」
「なっ…い、妹でしょ!?先輩の言うことが聞けないっていうの!?」
「私、尊敬する先輩の話しか聞くつもりないから」
「尊敬できないっていうの!?こんなにキレイなのに!」


確かにこの女、見た目はそこらへんの女よりワンランク上だ。


「だけどさ…そんな見かけ、いくらでも化けれるんだよ。大事なのはそんなもんじゃねえだろ?」
「なっ…!」
「あー…分かったら、さっさと帰ってくださいっス。マジ邪魔なんで」
「……っ。お前ら、先輩にたてついたらどうなるか分かってんだろうな!」
「分からないなぁ」「知りたくもないッスよ」
「っ……!!!」


女は逃げるように教室を出ていき、数秒後クラスに拍手が起こった。


「「は?」」
「すごい!あの先輩ものすごく怖いって有名なのに、よく歯向かえたね!」
「うちらのクラス負けなしじゃん!」
「…は?何言ってんのコイツら」
「まぁまぁ、いいじゃないッスか!」
「で、アンタは何で私を助けたわけ?」
「別に助けたわけじゃないッスよ。ただああいう輩が、無性に気に食わないだけ」
「…そう」

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