(初恋篇)



今日も空は青い、7月中旬。短く切ったスカートの裾を軽くつまんだ。

「……隆ちゃん。迷子なんだけど」

部活中の兄の携帯に留守番電話を残し、真央は眉間に皺を寄せながらスタスタと歩いた。
中学最後の夏休みに、なんで隆ちゃんの忘れ物届けないといけないわけ?
真央は母親からの強引な頼みが気に食わなくてずっと不機嫌だった。

「はぁ…帰りたい」

帰って松屋の牛丼が食べたい。タイミングよく、お腹が鳴った。
隆は少々おっちょこちょいな面があって、その度にカバーするのは妹の真央だった。
今回も朝一から夕方までの部活練習に向け、爽やかな笑顔で家を出たのはいいが肝心の弁当を忘れていた。

「もう子供じゃないんだからコンビニで済ませばいいじゃん…」

真央の母親はいつもニコニコした能天気な人だ。毎朝楽しそうに兄と父の弁当を作っている。
父親は元暴走族で今は会社の部長を務めている。昔から器量がよかったからよく「参謀」と言われていたらしい。
今は優しい父親だが、怒るととんでもなく汚い言葉遣いをする。

「あー………暑い」

行く途中に寄ったコンビニで買ったアイスの棒を加えて、真央は花壇に腰かけた。
向こうではプールの補習授業なのか、何人かの女子が楽しそうにはしゃいでいる。
高校生にはあまり見えない体ばっかり…あ、失礼か。
しかし、暑い。だらーっと顔を上に向けた。

「あんま見えねェな…」
「ん」
「あ?」
「ん?」

見上げたら、灰色の校舎から半分身を乗り出して双眼鏡でプールの方向を見る白髪の天然パーマがいた。
真央の小さな声に気が付いたように、天パも下を見て血の気がさっと引いた。


「……」
「………あ、いやこれは」
「変態」
「違ァァう!これ、あれ!あのー…そう!プールを覗こうとするよからぬ輩がいないか見てただけだから!」
「不審者ならいるでしょ。お前」
「おっ俺は違ェよ!?教師だから、教師」
「いるよねー、よく女子トイレ盗撮して捕まったりする教師」
「やめてェェェ!そんな目で見ないで!マジ違うから!確かに下心はあったけど別にそういうのではないから!」
「暑いのに大きい声出さないでよ、変態」
「なっ……!!」




これが、私と銀八の最悪な出会い。



白い校舎⇒灰色校舎に変更 1127

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