(入学篇)


キーンコーンカーンコーン


「真央ちゃーん一緒にごは」
「ごめん!私行くとこあるから!!」

チャイムが鳴ると同時に立ち上がって教室から出る。
小銭を握りしめて、軽快に走って向かう先は

「隆ちゃんっ」

隔離された2-Zに飛び込んだ。

「真央」
「お金!お金が足りない!ヘルペスミー」
「ヘルプミーな。母さんの弁当持ってきてないのかよー?」
「作ってないよお母さん。ほら早く」
「んー俺お金持ってきてない」
「えー……」

二人でにらみ合いながら黙っていると、右側から拳がにゅっと出てきた。
ちらりと右側を見ると、にこやかな顔で笑っている茶髪の男子がいた。

「なに?」
「俺があげまさァ。ほら400円」
「……いや、いい」
「金ねェんだろィ?別に返していらねーから、ほら」

有無を言わさない笑顔に負けてしまった私は、ゆっくりと掌に転がっている4枚の100円玉を取ろうと手を伸ばした。
瞬間、

ガシッ

「へ」
「捕まえた」
「え…いや……は?」

私の手は彼のもう片方の手に捕まれて、強く握られた。

「てめェかい青田の妹ってのは」
「総悟…」

隆ちゃんが苦笑い(というよりも引きつった笑い)で総悟とかいう男を見る。

「離せ総悟」
「おっといきなり呼び捨てかィ?」
「離せ。わかった、わかった。金はもういいから。離して」
「離してください総悟さまだろ?」
「は…離してください、総悟……さま」
「あー聞こえないねェ。メス豚のこの卑猥な手を離してくださいでないともう出ちゃう、出ちゃううぅぅ総悟さまぁぁぁぁ…って言えよィ」


スパァァァン


「てめェは入学したばっかの一年に何言ってんだよ!ったく……あ?青田妹じゃねーか」
「……銀八、」

突然私の横から国語の教科書で総悟を殴った人物は、ずっと会いたかった銀八だった。
いつものように死んだ魚の目をほんの少しだけ細めながら、銀八は「おー」と答えた。

「可愛いじゃねェかセーラー」
「……ん、まあ」
「何すんでさァ坂田。ケツが二つに割れたじゃねェかィ」
「ケツはもともと割れてるし銀さんはケツを叩いてませーん頭ですぅ。それより何しに来たんだ?真央」
「お?銀ちゃん誰アルかその小娘!」
「あら見ない顔」

銀八が私に話しかけたのをきっかけに、今まで教室で騒いでいた人が一気に私を取り囲む。

「かわいいー」
「青田の妹で俺の専属メス豚でさァ」
「「違ェだろ」」

私と銀八のツッコミがハモッて、思わず目があった。さっと逸らしてすぐ後悔。

「へェーこれが真央アルか!」
「まぁ綺麗な人」
「あ、真央も挨拶しろよ?」
「…はあ。青田真央」
「青田妹は口悪いけどいい奴だからなー」
「うるさい黙れ天パ」
「あれェェ!?妹どうしたァァァ!?お兄ちゃんこの子反抗期なの?」
「生まれた時から」
「うるさい黙れシスコン」
「ぬぁっ…!?真央、どこでそんな言葉覚えた!?」
「ぎっもがばごもぼ」
「はーい一回黙ろうか妹ちゃーん」

後ろから銀八に押さえつけられて私は口を閉じた。
言っちゃダメなの?シスコンって。

「ハイハイハイ!私神楽!留学生の神楽ヨ。よろしく真央!」
「新ちゃんの姉の妙です。で、こっちが新ちゃんこと志村新八よ」
「よろしくね、真央ちゃん」
「柳生九兵衛という……真央ちゃん、よろしく」
「これからお前のご主人様になった沖田総悟でさァ」
「少し黙れ総悟…土方だ。青田とは同じ剣道部だ」
「入学おめでとう真央ちゃん!!!!近藤勲だ!」
「銀さんとちょっと知り合いだからって調子乗るんじゃないわよ!猿飛あやめ。銀さんの奥さんって呼びなさい」
「俺ァてめーを嫁に呼んだ記憶はねえ」
「まァ銀さんったら」

……ああ、隆ちゃんが言ってた人ってこの人達か。
キチガイ?くるくるパー?あ、くるくるパーは銀八だけか。

キーンコーンカーンコーン

「あっ」
「授業はじめんぞー皆席つけー」

チラリと横にいた隆ちゃんを見つめたら、視線に気づいたように苦笑いした。

「ま、こんな奴らだ。暇んなったらいつでも遊びに来いよ」
「……ふーん」
「あ、でも友達とも遊ぶんだぞー。大事になー。帰る時メールしろよー」
「「「「「「父親か」」」」」」

私は2Zから出て長い長い廊下をコツコツと歩いた。
友達、ねェ………。

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