(初恋篇)




いよいよ、だ。
受験をすると決めればそれからはあっという間だった。
先生たちが大喜びで手続きやらを勝手に行って、銀魂高校への受験届は出してもらった。
(この際高校さえ通ってくれれば底辺の銀魂高校でもかまわない、と言われた)
どうして急に?それも、銀魂高校なんかに。とみんなに言われた。
そのたびに曖昧に笑いながら気まぐれに適当な理由を答えていた。
私だって、本当は入りたくなかった。
だけどどうしてか、必死になってる自分が心のどっかにいる。
ここは、あーでとかあれは違うから暗記しないと、とか。
適当にやっていけばいいのに、あの目がやっぱり忘れられない。



「ただいま」



冷たい風が吹くなか、缶コーヒーを飲んで待っていた隆ちゃんに声をかけた。
たった今高校での受験が終わったばかり。手ごたえはあまり感じれなかった。
隆ちゃんからもらったお守りを握りしめたら緊張もクソもなかったし。


「おかえり。どうだった?」
「40%力出した」
「まあ俺でも受かったんだし、全然大丈夫だって」
「そうだよね。隆ちゃんが受かったんだし余裕」
「そうそう……って、おい!」


つまらないノリツッコミを聞き流しながら二人で家路をたどる。
今日は坂田に会えなかった。あの、泊まりに行った日以来会ってない。
いや別に会いたいとかそういう訳ではないんだけど、



「そういえば何部入るの?」
「え?んー……帰宅部」
「剣道部には入らないのかよー入れよー」
「男くっさいとこ嫌いだから」
「あ、そーですかー…」



それにしても寒い。雪もちらほら降り積もって、体の震えが止まらないようだ。



「受かるといいな」
「ん、そうだね」
「なあ真央?」
「ん?」
「あのー…さ。坂田先生と…知り合いだったの?」
「ん、まあ」
「あっそ…いやさ、一昨日先生に聞かれたから」
「何を?」
「青田妹は明日大丈夫なんだろーな?って」
「……ああ、そ」


心配してくれるんだ。ふーん。
まあ確かに、あんな質問やってまで私に高校受けさせたかったのに受からなかったら何も意味ないもんね。



「あれ、青田−」
「あ、坂田先生!!」
「…げ」
「おい、今聞こえたぞ妹」



坂田は隆ちゃんの前では真央なんて呼ばないってことに気付いた。




「何、今受験終わり?」
「はい!」
「へー、手ごたえはどうなの」
「…べつに」
「おい真央、先生に失礼だろその言い方」
「ホントだよどっかのエリカ様かと思っちゃったよ俺ー」
「はあ」




この二人、めんどくさいタッグ。
純粋無垢で真面目なバカ兄貴にやらしい目で見る変態教師。





「4月からは一緒に来れるね、隆ちゃん」
「え、俺の事スルー?ねえ妹ちゃん」
「楽しみでしょー、妹のセーラー服姿」
「ま、まあ」
「俺もみたいなー妹のセーラー服姿」
「訴えていい?」
「なんでだよ!?」




素直に答えられない。





20111210

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