(初恋篇)




「国語」
「おいおい銀さんの担当教科じゃねーか」
「いいから、ほら」
「あーはいはい。えっと、まずは文法からいってみっか」
「うん」


朝。
隆ちゃんはどうやら、お昼過ぎに来るらしくて。
それまでちょっとだけ受験勉強をしようかとなった。
正解を当ててしまった以上後戻りはできない。
それに、なんかわかんないけどドキドキする。
あの時初めてみた悲しそうな目。表情。
今はいつものダルそうな顔してるけど、


「この"かっ、く、う"が当てはまっているならこの動詞は形容詞に当てはまる」
「はあ?」
「だから、あー…"うれしく"とか"楽しく"は"く"が含まれてんだろ?」
「うん」
「つまりこれは形容詞の連用形になるわけ。形容詞ってのは?」
「えっと……語尾が"い"で終わる自立語、だっけ」
「そ。"うれしく"も"楽しく"も、もとは"うれしい""楽しい"だからこれは形容詞っつーことね」
「ああ、なるほどね」
「……今すごい棒読みだったけどちゃんと分かってる?ねえ銀さん泣きそう」
「あーわかったって。連体形ね」
「連用形だバカ。これ2年生の範囲だぞ?」
「ニガテなの」


そういいながらワーク問題を解いてみた。
棒読みとか言われてるけど、本当にわかりやすいと思う。
そもそも形容詞ってナニ?って思ったけど、そこは触れないでおこう。
坂田はやっぱり教師なんだなと思った。考える時の目線とか、ペンを回す仕草とか、不覚にも大人の男って感覚を感じた。


「お、正解正解。以外とできてんじゃねーか」
「別に頭悪いわけじゃないし」
「調子のんなって」
「あ…ねえ、坂田」
「ん?」


っ…うお、今のはキた。
頬杖をつきながら横目でこちらに微笑みかける坂田は、きっとそこらへんのホストよりもかっこよくて…って、何言ってんだ私。



「坂田」
「だからなんだよ」
「い…いや……なんでもな」
「どうしたお前?」



熱でもあんのかよ。そういって私のおでこに触りかけた。



パシッ



「う、…悪い」
「いや…俺こそ悪ィな」
「いや、あの別に嫌いとか気持ち悪いとかそういう意味でふり払ったわけじゃないから!」
「その言い方余計傷つくからやめてくんない?いいよいいよ銀さんももう気付いてるから」



いや、本当にそういう意味じゃなくって……!!




って。
なんでこんな必死になってコイツに媚売ってんだ、私。
ハッと気づいてまたいつもみたいに眉間にしわを寄せ、坂田を睨んだ。





なんでこいつにときめかないといけないわけ!





20111210
え?いや別に正常なはずなんですけどねー…頭………

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