(初恋篇)

「これ、届けに来た」
「これ?……あ、これか」
「クリーニング出したまんまだった…ゴメン」

小さく頭を下げたら、手で撫でられた。右手で軽くふり払ってココアを口にする。
もう渡すもの渡せたし帰ろ…ん?

「じゅっ……11時!!?」
「あー、もうお前今日はここで寝ろ」
「…はあ!?何言ってんの、帰る!!」
「帰りたいなら帰れよー。ただし送らないから」
「……(こいつ…!)いいよ、帰ってやるから!すぐそこだし」


服が入っていた紙袋を提げてドタドタとアパートを出た。
当たり前のように外は真っ暗で、人っ子一人通っていない。
坂田は見送りもしないで、向こうからはテレビの音が聞こえた。



「………」



無理。
さっとドアを閉めて暖かいリビングに戻る。
ソファの上では、寝ころびながらニヤニヤと気持ち悪い顔で見ている坂田が。



「なに、忘れ物?」
「…きょ、今日だけ。1日くらいなら寝ることも……我慢する」
「我慢するー?いいよいいよー、気つかわなくったって。帰りたけりゃあご勝手に」
「……ぐ…」
「お前ってなんか気ィ強いし、まさか暗い所怖いなんてことはないよなー?」
「……」
「あれ?もしかして、そうなの?」
「………!!うっるさァァァァい!!!!!!」


バシッと一発顔を蹴り上げたら、坂田は目をパチパチさせながらソファからずり落ちた。



「…いや、お前の方がうるさいって……」
「だから…!今日は泊まってやるって言ってるの!わかった!?」
「は、はい」
「じゃあ今すぐご飯用意してよ!」
「えええ?!無茶だろ!」



ぐぅぅぅ



一瞬静まり返って、また私は顔が赤くなるのを感じながら坂田のお尻を蹴った。





「ほらっ早く」
「いてっ…たく、ホントガキは夜でも元気だよなー。適当でいいだろー」
「不味かったら許さない」
「わぁった。あー、もう…今日はべろんべろんで帰ったのに酔いも冷めたわ…」
「え、の、飲んでたのかよ」
「残念ながらイブに遊ぶ女なんて一人もいないからなー。あ、今はいるか」
「…私はその中に入れないでよ」
「ハハ、ガキだもんなー」

遠くから聞こえる坂田の言葉に少しズキッとした。
ガキガキうるさいっての……隆ちゃんとなんて1歳しか変わらないし、坂田と……

「…そういえば、アンタ何歳なの?」
「何歳に見えるー?」
「んー……2……5」
「残念ー24でした」
「え、マジ」

ってことは…9歳差?ってこと?
私が生まれた時にはコイツはもう小学3年生だったってことか…。
そんな風には見れないくらい、子供っぽいけど。



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