(初恋篇)


11月。
進路調査の紙を、担任から渡された。それは2枚目。
1枚目はどこかにやってしまってそのままにしていた。

「高校…か」

頭悪いし、学校の行事とか嫌いだし…。高校、行くのやめようかな…。
紙をくしゃくしゃにしてカバンの中に入れる。
隆ちゃんから「醤油がない!あとポン酢も!」というメールが来ていた。
また私をおつかいに使うのか、お母さん。

「ふふんふー」

軽く鼻歌をうたって学校から出た。
家の近所のスーパーへ行くには、どうしても銀魂高校の前を通らなければいけない。
嫌々ながらも、真央は足を進めた。


「あーさむ…」
「あ」
「あ?」


校門前を、マフラーで口元を隠しながら早足で通ったら左側から声をかけられた。
見覚えのある天然パーマに思わず顔を顰める。


「なんだよ変態」
「まだそれ覚えてたの!?ていうか、今帰る途中かよ」
「そうだけど」
「もう7時半ですよー。中学生がこんな時間まで外にいていいのか?」
「私に聞かないでよ。担任から説教受けてたの」
「ヘェ。悪い事でもしたのか」
「してない!」


私は喋りながらも歩みを止めなかった。なのに会話が続くのは、坂田が横からついてきてくるから。


「何。ついてこないで」
「一応俺、教師だから。未成年が夜道を一人で歩くのは危険なんだって」
「今まで何度もあったから、平気」
「お前さァ…いつも日常とは限らないよ?」

呆れたような顔をしてこっちを見てきた坂田を睨む。

「別に思ってない」
「もしかしたら、急に襲われたりするかもしれねェんだから」
「………」
「え、何で俺を見るの。俺じゃない俺じゃないよ」
「こっち来ないで変態」
「だからァァァ!ったく……俺、残念ながらガキに興味はないの」
「残念ながらそんな事一つも質問してない」
「高校生になったら話は別だけど……中学生っておま、犯罪じゃねェか」
「高校生だったらいいんだ」
「まあ……」

言葉を濁し立ちすくむ坂田を見て、私は横断歩道を走って渡った。


「あっ」


坂田が気付いて横断歩道を渡る前に信号は赤になった。
してやったりという風に笑って、アッカンベーで挑発してみた。
が、


バシャアアァァァ


「……………」
「ぷっ…はははは!!!」


猛スピードで走ってきた車が、昨日降っていた雨のせいでできた水たまりの上を走って、見事に全身に水をかけられた。
丁度青になった時、坂田が大人とは思えない顔で爆笑しながら歩いてきた。


「…最低」
「車は悪くねェ…ふっぶくくく」
「アンタが最低って言ってんの!普通笑う!?」
「ぶ…くくくく………」
「次笑ったら蹴るから」
「………」


必死に笑いを耐えてる顔にイライラしながら、スーパーの駐車場に入った。


「あ、ちょい待て」
「……なに」
「そのままだと風邪引くだろ。俺ん家ここのすぐ近くだから、服貸してやるよ」
「……」
「下心はねぇぞー。それに、周りの男共の方が下心あるって。びちょびちょの女の子見て興奮する人とかいるからね、マジ」
「意味わかんない。……もし少しでも怪しい行動したら、蹴るから。私暴力振るうタイプだから」
「おーこえ」

それでも坂田は楽しそうに笑っていた。変な男。




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