(入学篇)

「隆ちゃーん」
「真央?どうした?」
「真央ちゃんじゃない!いらっしゃい」

昼休み、2Zの教室にお邪魔するとみんなから声をかけられる。

「友達できた」
「は?」
「どーも、来島また子ッス!へへっ」
「て、事で。これからは私ここの向かいにある保健室に通い詰めるから」
「ちょ、ちょ、え?なに?どういうこと?」
「保健室って…高杉先生がいるじゃねーか」

土方がボソリと呟いた。

「ん、そう」
「ウチらは高杉先生に会う"ため"に行くんスよ!」
「なっ……」
「高杉に会いに行くなんてもの好きもいるアルなぁ」
「どういうことッスかそこのチャイナ!」
「先輩にその口はなんだヨ!てかスカート短すぎアル!」
「別にいいじゃないッスか!!」

神楽と喧嘩しはじめたまた子を放って、教室を見回した。

志村弟、ヘドロ、巫女双子、ハム…いろんな2Zの生徒がちらほらと見えるけど、どうしても見つからない。

「………」
「あ、真央!坂田いねーけど、どうするんスか?」
「バッ…!な、なにいってんのアンタ!!?」
「え?真央、坂田先生に用があるのか?」
「うっ…」
「…。へぇ〜俺、どこにいるか知ってるけどねィ」
「そういや私もさっき見たアルなぁ〜」

ニヤニヤした顔のみんなの視線が私に集まる。
自分の兄以外は。

「……もーいい!どーでもいい!」
「あら真央ちゃん、坂田先生のことはもういいの?」
「だ・か・ら!もういいっていってんじゃん。第一会いたいなんて思ってないし」
「真央?」
「なによ隆ちゃん!」
「後ろにいるよ?」
「えっ!!?」

バッと後ろを見ると、面白くなさそうな顔で煙草を咥えてる銀八が私の真後ろにいた。
死んだ魚のような目…いや、もうそれを通り越して菩薩のような目があって動けなくなってしまう。

「う……よ、よう」

軽く右手を上げてみると、パコンと丸めた雑誌で叩かれた。

「よう、じゃねーよ。俺に用があんじゃねーのかよ?」
「な、ない」
「そこの金髪のネーちゃんが廊下にいた俺を引っ張ってきたんですけど」

バッと教室の出口を見ると、また子がニヤニヤした顔で見ていた。
バイバーイと手を振って保健室に入って行ったアイツには後で…
って、そうじゃない。

「いや、ほんと、なんでもないから、気にしないで」
「変なヤツ」
「真央−、ちょっとこっち来て耳ほじってくだせェ」
「アンタ馬鹿?」
「いいじゃねーかィ。俺とお前の仲だろ」

沖田総悟。
コイツは2Zに来るといっつも私に絡んでくる。
一回絡まれると隆ちゃんが止めてくれるか土方に興味を移すまで絡みをやめない。

「ほら、こっち来いよ」

女の子がときめくようなこと、言ってくるけど。

「土方にやってもらえよ」
「土方さんに俺の耳がほじれると思いやすかィ?」
「総悟、安心しろ。俺もお前の耳はほじりたくねェ」
「し・つ・こ・い」
「へぇー…いいのかィ?そんなナマ言っちゃって。」

坂田ー、真央って好きな人ができたらしいんでさァ

「はあ?」
「はあ!?!?!?!?」
「ちょっ声でけーよお前」
「あ…嫌…だって…」

いるわけないでしょ!?
そう気持ちを込めて向かいの総悟を睨むが、依然へらへらした表情のまま。
隣の銀八はポリポリと頭を掻いていた。

「まあいいけどよー。青春みてーでさ」
「いやいやいやいない!いないの!」
「あ?どっちだよ。どーでもいいけど、用がねーなら俺ァ行くぞ」
「お、おう…」

俯いて頷いたら、ポンと頭を叩かれた。
パッと振り返ると、ひらひらとこちらに手を振って教室を去る坂田が。

「…」

キーンコーンカーンコーン

「結局のところどうなんでィ」
「…違う」
「え?」
「生徒が教師に恋とか……ありえないし」



いくよ、また子。




「え、あ…それじゃあ高杉先生!またあとでっス!」




好きなんかじゃない。

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