(入学篇)

「おせェな青田さん…」
「どうしたんだろう…」

「銀さんいませんね。どうしたんだろ」
「どうせ野グソでもしにいったアル。ほっとけヨ」
「神楽ちゃん!?女の子がそんなこと言っちゃダメだからね!?」
「しかし隆くん。さっきからやけにそわそわしているが」
「ああ、九兵衛……なんでもないよ」
「そうか?」
「心配してくれてありがとな」
「うむ、構わない」

「お待たせー」


ざわめいたグラウンドに、一人の少女が向かってくる。


「あっ青田さん!」
「よかったサボったのかと」
「ちょっ、バカ!」
「あっ」

「サボりたかったんだけどねェ、私用事があってここに来た」

「ちょっと何でアイツ帰ってきたの!?」
「あそこにいるの…坂田先生じゃんっ」
「じゃあ…」

右手にグローブをしっかりとはめ込み、ボールを左手で転がして

「どこぞのバカ女が私に嫌がらせをしてきてね。私、そういうの大大大大大嫌いなの」

「「「っ」」」
「お怒りのようですねィ」
「ああ…ありゃキレてる顔だわ。あいつは気付いてないけど、イライラしたら指いじるしマジギレしたら耳かけする。わっかりやすいだろー」
「ホントだ耳かけしてる」
「しかも両耳だぜ」

「昔は体でわからせてたんだけど……それをしたら嫌になるから、やめた」

チラリと真央は右上のフェンスに寄りかかる兄を見た。

「だから……野球で、仕返す」











「ゲームセット!!0-11、1Z優勝!」
「「「「「おぉぉぉぉ!!」」」」」」
「すごい!すごいよ青田さん!」
「一瞬で11点取っちゃったよ!!」
「管理人のスポコンものの実況のできなさにはビックリだよ!」
「おい!今言った奴!」
「焼肉だァァァァァァァ!!」


ベンチにいたクラスメイトも、フェンスで応援していた女子たちもみんな集まって、私は胴上げされた。


「わっわっ」
「「「「ばんざーい!ばんざーい!」」」」



胴上げされながら、思ったこと。



………体育祭サイコー





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