(入学篇)



ガタガタッガチャッ

「真央!!!!」

銀八は大きな声で生徒の名前を叫んだ。だが水滴が床に落ちる音しかなく、小さく舌打ちをした。
暗い奥の個室が、その近くにあったはずのタオル棚で閉じられていた。
姑息なマネする奴もいんだね…。
そこからタオルを数枚とって、タンスをなんとか元の位置に戻した。

バタンッ

「真央!!!」

床に倒れている真央を見つけて血の気が引いた銀八は手にしていたタオルで彼女を包み込みぎゅっと抱きしめた。
何やってんだ…ホント…。
若干固くなっている体をすぐに解すように、自分が濡れていることも構わずにただ抱きしめた。
目を覚ましてくれ。俺を殴ってくれ。頼む、真央。
昔俺に告白してきた生徒とその取り巻きが、今でも俺に好意を持っているのは気付いていた。だから俺が真央を見る目が、普通の生徒に対しての目とは違うってことがわかったんだと思う。アイツらが消えた真央のところと同じとこへ向かうのを見て、すぐに追いかけた。
だが運悪く全蔵に捕まって、「女子高生のシャワー覗きに行くんじゃねえだろうなテメー?」といちゃもんつけられ誤解を解くのに必死になったら、アイツらが逃げるようにシャワールームから出ていくのを見かけた。結果的にそれから10分ほどたってようやく開放されきてみればこれだ。

「おい真央、真央」

体を揺すってみるが反応なし。

「真央」
「……ん」
「!」
「あ?……銀、八?」

俺の腕の中で真央がじっと目を見てきた。
脳に異常はねーみてーだし、こりゃ高杉に見てもらうだけでも無事か…?
というか、今はそんなのどうでもいい。

「あー…よかった」

震えるような声で呟いて、冷たい肩に顎を乗せた。

「…あ」
「あ?」
「試合!」
「うおっ」

真央がバッと立ち上がって俺が尻もちをついた拍子にタオルも引っ張ってしまい、全裸の真央と俺の間に妙な空気が流れる。

「……っ!!!」
「い、いや今のは事故でホント!わざとじゃなくて」
「バカヤロォォォォォォ」
「うおォォォォォォ!?」

背負い投げされた俺を一蹴りした真央は、籠に入っていた衣類を手に取って「信じられない」と呟きバタン!とドアを閉めた。

…何にせよ、これは3Bの担任にいっておかねーと。
いや俺が直接彼女らに言えばいいだけの話か。

「銀八」
「あ?」
「私を閉じ込めた人らって知ってる?」
「ああ、まあ」
「何組?」
「あ?」
「何年の何組って聞いてんのよ」
「……3年B組」

バタン

「丁度私の対戦相手じゃん。やられたら倍やりかえさねーと」


ユニフォーム姿で出てきた真央、いや真央様の殺気はおそらく裏ボスマスカークもたじろぐものだっただろう。

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