(入学篇)

「試合終了!4−5で1Zの勝利!」
「「「「おおおお!」」」」
「青田さーーん!」
「う、うおっ!!?」
「やりましたねっ!」
「やったやったー!」
「まっ……て……まだ3回戦残ってんだろーが!」
「そうッスけど!」

一緒に試合をしていた奴らに囲まれて私は逃げるにも逃げられない状況に陥られた。
汗くせええよ…!!バカ!

「はいはい一旦落ち着こうかーバカ。バカのバカたち」
「銀八先生だ!」
「銀八…」
「次2Zの試合だから、応援しろよな」

銀八はクラスメイト達をかきわけて、私の真ん前に来た。

「う、ん」
「…。わかったらこんな汗くさいとこにいないでさっさとグラウンド出る!」
「おわっ」

小脇に抱えられた私はジタバタと手足を動かしながら抵抗したけど、大の男の力にかなう訳もなく…みんなに大注目されながらグラウンドを出ることになった。

「よっ…と」
「何…してんだバカ!」
「おめーさァ」
「っ…なんだよ」
「最近の高校生は姑息な罠を使ってセクハラしてくんだから気ィつけろよ?」
「なにがだよ」
「だーから……いや、もういいわ」
「はあ?」
「お前は何も考えないで銀さんだけを応援してなさい」
「なんで。出ないじゃん、アンタ」
「銀さんベンチで必死に指示出してるから。それ見てて!」
「可愛く言っても見ねーよ!シャワー浴びてくるから」
「えー銀さんもいきたーい」
「バッカじゃねェの!?ほら、いってこいよ」
「いてっ」

銀八の背中を押して、私は火照る顔を俯いて必死に隠した。
と、とにかくここから離れよう。
私の出番はあとは決勝だけになったから、この2試合の間は暇。
いまのうちに風呂入っておけばいいけど、…

「…あーもう。しゃーねーな」

ガシガシと頭を掻いて、ドサッと草が広がる観客席に座った。
ここなら誰も来ないはずだし、…2Zのベンチコート見やすいし。
って、別に銀八を見るためにじゃなくて!!!隆ちゃんが!

「あ、土方」

試合前に噂されていた、2Zの中心人物の一人ともいえる男がグラウンドの中央に立った。
捕手は志村のメガネの方で、他何人かが後ろで何やら叫んでいる。
相手側の1番バッターはツインテールの女の子。
土方は少し顔をひきつらせながら、何か考えるように顎を触り、決心したようにゆっくりとボールを投げた。

カキィィィィン

……まあ、一人目だし女の子だし。遠くに返されたボールをやる気のない沖田が歩きながら取りに向かっていた。
その間に女の子は既に2塁までいて、

「おうい総悟!てめェェやる気だせ!」
「やる気を出すのはお前だ土方ァァァァァ」

バシィッ

遠くから投げた沖田のボールはまるでかの野球選手のレーザービームの如く真っ直ぐと土方へ向かっていき、顔面にクリーンヒットした。
うわいってー。
その間にも女の子はホームに戻っていて、気が付けば楽々と1点取られていた。

2人目。女の子。
カキーン 長髪の茶髪が取ろうとする取ろうとする取ろうとしたところで今度は黒髪の長髪が長髪に体当たり……ってもうなにがなんだかわかんねーよ。

3人目。ちょっと太った女の子。
ガキィン 鈍い音が響き渡る中、今度は阿音とかいう人がバウンドさせながらもとった。
だけどそれは1塁ではなく20Mほど右側にいたハムみたいな女に思い切り投げられた。

「いたァァァァ!?」
「あれ?どっちがどっちか分からないんだけど」
「いやね阿音ちゃん。白が目当てよ。ガングロ卵ちゃん(特大)はほっといていいのよ」
「ごめんなさい妙。気を付けるわ」
「おいおいお前らいい加減にしろよォォォォ!?どんだけ点数とられたら気がすむの!?」

ベンチから銀八が大きく声をあげた。

「てめェらここは老人ホームの運動会じゃねェんだよ!バカみてーに女子がきたら手抜きやがってよォ、打たれてんじゃねーか!それとお前らもっとシャキッとしろシャキッとぉ!」
「今ベンチ占領して横になってる奴に言われたかねーんだよ…」
「ちょっとちょっと神楽ちゃんあの子女の子意識して優しく投げてますよどう思いますぅ?」
「プププーよかったアルなァ?マヨラーからマヨ王子に昇格ネ」
「お前ら腹立つ…!腹立つ……!」
「男というものが異性などで戸惑ってみっともないぞ!銀八、僕と彼を変えろ」
「まあ待てって九兵衛。土方くんの勇士最後まで見てやろうぜェ」
「いい加減にしろてめェェらァァァァァァァァ」

シュオオオオオ

「きゃっ」

バシュ!

「ストラーイク」
「「「「「「「………」」」」」」」」
「けなげな女子に対して殴り殺す勢いでしたぜ。さすがだ土方さん」
「マジ最低アルしばらく私に話しかけないで」
「なんでだァァァァァァ!?」


結局途中交代でピッチャーが色々な人に変わったけどみんなうまくいかなくって2Zは大ダメージを受けたまま試合は終わった。
なるほど、だから土方がピッチャーだったのか。一番まともそうだから。


私はよっと立ち上がってお尻についた草を手で払った。
今度こそシャワー入るか。着替えもって、下のシャワールーム…。



この時、丘をおりたところを銀八にずっと見られていて、そんな銀八を見て私を追いかける複数の女がいたことに私はまだ気付いていなかった。

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