(入学篇)



「それじゃあ自己紹介から。先生の名前は谷垣幸一。谷垣先生と呼べ」
「「「「「…………」」」」」
「…んじゃ、出席番号の1番から」

1年Z組。
別に、2年Z組みたいに厄介クラスというわけではない。
今年度の入学者が例年よりも多くて都合上アルファベットのZもう一個やっとっか。みたいな話になったらしい。
ポケットに手突っ込んで足をだらんと伸ばす姿はおそらくマーライオン的何かを思わせるのだろう。いや、マーライオンじゃなくてもいいけど。猛獣っぽい感じでお願いします。
先ほどの醜態はどうしたらいいのだろうか。先ほどから私はもんもんと考えていた。
低血圧の私にとって朝は地獄。もうドロドロ。
当たり前のように一緒に行こうと言った隆ちゃんにビンタ一発かまして(別にむしゃくしゃしたからやっただけで、悪意は全くない)先にやってきたら先輩にさっそくメンチきられて逆ギレ。
しかもみんなが凍り付いていたのが嫌だったからその場を盛り上げようと思っていったのが、先輩のパンツの柄。可愛いじゃないかみかん柄。何故みんな笑った。
もう私のハイスクールライフはお終いを告げただろう。
みんなから恐れられ、先輩からにらまれ続ける毎日になる?いやだそんなの。
おいおいどうすりゃいいんですかコノヤローって感じだわ。


「い、おい。青田」
「っあ?」


ほらまた。口から咄嗟に出た言葉で担任が少し顔を顰めた。


「次はお前の番だ。立て」
「……」


ガタッ、とポケットに手を突っ込んだままゆっくり立ち上がる。
みんなの視線が私に集まる中、ぽつりぽつりとつぶやいた。


「青田真央…帰宅部」


そのまま座ると、ざわざわと教室がざわついた。
先ほどの事が既に噂になっているのだろうか?ヤンキー少女だよ!みたいな。アイツ生意気じゃね?みたいな。勘弁してほしい。



「みんな静かに。はい、じゃあ次」



後ろの椅子がギーと動く。ちらっと振り返ると、金髪が揺れているのが分かった。
うえ、ヤンキーだ。ヤンキー少女だよ。



「来島また子ッス。ヨロシクッス!」



人懐っこそうな話し方と高めの声に、まあ予想通りのキャラクターだと冷静に思う。
らいじまさんかと思ったらきじまなのね。はいはい。
それよりも坂田。坂田銀八に会いたい。
頬杖を突きながら窓の向こうの青空をボーッと眺めた。




結局今日は、教科書やワーク、辞書類を渡されただけで会うことはできなかった。



(一番に見せたかったセーラー服)



20111210


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