(初恋篇)



「あー…じゃあなーっく」
「気をつけろよ銀さーん…またなー」

二人してヨロヨロになりながら店を出た。あー気分がいい。
千鳥足になりながらも、家までの道は間違えないようにしっかりと前を見る。
時折電柱に手を吐いてムカムカしたものを吐き出して。
いつも通りの酔っぱらった帰り道。じゃ、なかった。



「は?」



アパートの、俺の家の前で体育座りして眠る少女。
年齢とは比例しない大人っぽさと、可愛らしい声音での生意気な口調が特徴の…


「青田妹……真央?」


俺の酔っぱらった頭はついに幻覚までも見せるようになっちまったか?
いくら今気になっていたって…おいおい神様そりゃないぜ。
夢なら早く覚めてくれ。な?3秒やるから3秒。


「さーん…にーぃ…」


目をギュッと瞑って、頭をガンッと殴った。


「いち!」


いる。さっきと体制は変わらずに、顔を俯かせて頭に白い雪を積もらせて目の前にいる。
何やってんだコイツ……もう11時だぞ?


「はぁ…おい、おい」


しゃがみこんでペチペチと頬を軽く叩いたが、返事なし。
え……ま、まさか…死んでる…とかはねェよな、ハハハ…ハ……


ピリリリ


「ぎゃァァァァァァ」


突如どこからかなった電子音に度胆を抜かれた俺は、ドアの前に居座る真央を抱えて隣に落ちてた白い紙袋も手に取って急いで部屋に入った。
どうやら電子音の発信源は紙袋の中の携帯だった。息を整えながら靴を脱ぎ、真央のブーツも手間取りながら脱がせることができた。


通話相手は青田。出ていいものかと一度躊躇したが、鳴り止まないそれに反動するように通話ボタンを押した。


『もしもし?真央?』
「あ…あー…コホン」
『……誰ですか?』
「坂田銀八でーす」
『……え?坂田先生?あれ、ごめんなさい間違えました!』
「いやいや合ってるよ。妹の電話番号」
『え、え?』
「実はさ…あー…家の帰り道で、コイツ倒れてて。今俺の家にあげてんだわ」
『倒れた!?』
「あ、いや別に大した感じではないんだ」
『ど、どうしよう…今から迎えに行きます!』
「あー…もう夜遅いし、今日はやめておけ。明日朝一で来いよ」
『え?で、でも』
「おいおい担任が信頼ねェってか?悪いけど銀さんには愛しのキディがいるから、手は出さねーよ」
『そ、そうですか………?あの、うちの両親今旅行中だから明日…俺が行きます』
「おお、分かった。悪いな」


何時からコイツはいたのだろう。体はすっかり冷え切っていた。
ソファに寝かせて、もう一度強く頬を叩いた。


「んっ……」
「おい真央、真央」
「………ん?」
「ん、何しにきたコノヤロー」
「……おわぁっ!?」


目を覚ました真央は顔を覗き込む俺にビックリして、赤面しながら小さく跳ね返った。
あ、今の心にキタ。


とりあえず目を覚ましたコイツに、ホットココアをあげるとするか。


未だ赤い顔している真央をリビングに放っておいて俺はコーヒーメーカーまでだらだらと向かった。




111130
ちょっと意味がよくわからない展開に
真央ちゃんがだんだんと銀さんを意識しはじめてます

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