(初恋篇)




信号が赤になって、原チャリはゆっくりと止まった。

「なんで?」
「あ?」
「なんで行きたくないんだよ」
「高校行ってまで勉強とかしたくないし。家にいたほうが楽でしょ」
「んな事ねーよ」

また青に変わって、冷たい風を感じる。

「高校生ってのは…バカみたいにはしゃいで、たまに悲しい思いをして、それで立派な大人になるってもんだ。大人になって後悔すんのは、自分だぞー」
「…………別にいいし」
「ぐえっ痛い!痛いってお前!」

ぐっと手に力を籠めたら、少しバランスがフラフラした。

「コンビニついたぞー」
「うん」
「何買うの?」
「醤油とポン酢」
「あー…じゃ、これ買っとけよ」

坂田から詰め替え用の醤油とポン酢の袋を渡された。

「なんで?別に瓶でいいじゃん」
「こっちの方が安いし、ごみはなるべく小さいほうがいいでしょ」
「お母さんかよ」
「…学んだんですー」
「はいはい」

さっさとお金を払ってコンビニを出た。

「家どこ?」
「あー…ここの国道を右曲がって、2つ目の角の3番目」
「おー」

走っている間、会話はなかった。
教師としては高校に行きたくない、という言葉がショックだったのかな。
聖職ぶってる教師が私は嫌いなんだけどね。
でも、こんな教師見たことない。ダルそうで、友達みたいに生徒に話してくるのに、全く熱血系とかではない。
…脱落系教師?っていうの、コレって。


「ん、ついた」
「ありがと」
「家に帰ったら風呂入れよー」
「うん」
「あ?」
「え?」
「………いや、間違いか。なんでもねー」
「ふーん。じゃ」
「おやすみ」


右手だけひらひらと振って私は家の中に入った。



「………青田ん家?…いやいや、まさか」



帰ったら飲むか。




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なんじゃこれ

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