「やあやあカイジくん、そんな若い女の子を連れ込んで、いいご身分じゃないか」

「違う!違うんだこれは!」

「家に帰ってきたら、その子が勝手に上がり込んでいたとでも言う気か?」

「そうだ、信じらんねえかもしれないけど…!」



俺と遠藤は睨み合う。あぁ、たしかにその通りだが、そんなことを言っても信じてもらえる気がしない。どうしようかと、混乱した頭をさらに混乱させていると、突然遠藤が笑いだした。



「わかってる、わかってるさ」

「は?」

「俺はなぁ、そのお嬢さんの親父さんから連れかえってくるように仰せつかったんだ。カイジ、お前まさかこれほどのお嬢さんに発信機がついていないと思ってたわけじゃないだろう?」

「は、はは…」



後ろを見ると、なまえが遠藤を見ていた。この眼光は父親譲りと言ったところだろうか。



「ほら、お迎えだぞ」

「迎えがきてほいほい着いていくぐらいならこんなことしないよ」

「まぁ確かに…」

「納得してる場合じゃあないぞ、カイジ。こんな薄汚いところにいても何もならない、帰りますよ、お嬢さん」

「どうせ薄汚い豚に飼われるんだ!ここにいたって変わらないよ!」



なんか酷い言われような気がするのは気のせいか?いや、薄汚いのは事実なんだが…。



「おいオッサン、そこどきな」

「!?」

「あぁ…、カイジくん、なまえはもう終わりだよ…」



玄関先に立っていた遠藤の後ろから、また別の男がでてきた。まずい、これは…俺の平穏を壊す者2人目の臭いがする。
案の定、その男は俺の方をサングラス越しにじろりと睨むと、ずかずかと部屋に上がってきた。さっきから俺にしがみついていたなまえの腕に、さらに力が入る。



「カイジくん、なまえが豚にさらわれそうなんだよ?助けて!」

「んー、ひどいなぁなまえは。昔みたいにお兄様って呼んでくれよ」

「ぶっ」



豚、これが豚…!たしかに、豚と言われれば豚かもしれない。



「帰るぞ、なまえ」

「そうだそうだ、家族に心配かけちゃいけないって」

「だれも心配してくれなんて頼んでない!」

「ご丁寧に発信機持ち歩いて、何が心配してくれなんて頼んでない、だ」

「うあっ!」



後から来た、なまえの兄と思わしき男が、ひょいとなまえを持ち上げた。たしかに、最初からこうすればよかったんだ。遠藤はまだ玄関先で所在なさ気に立っている。



「お前、なまえに手だしたりしてないだろうな?」

「してねーよ!ていうか俺の方がされたっつーかなんつーか…」

「何もしてないならそれでいいんだよ」



キッと俺を睨んで、なまえを抱えた男は去っていった。間違いない、ありゃあ兵藤の息子だ。じゃあ、邪魔したな、あいつらも悪気はないんだ、と言って遠藤も出ていった。

離せ、自分で歩くから離せというなまえの叫びが聞こえる。










ゴーイング・ゼロ

(ああっ!ていうか静かにしてくれよ!近所迷惑!)




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