なんだか視線を感じて一条が事務室の前に戻ると、中から会話が聞こえてきた。別に立ち聞きする気はなかったのだが、フロアから戻るにはまだ早い気がしたし、ちょっとした好奇心が勝ってその場に留まることにする。

 中から聞こえてきたのは、村上くんも聖也くんが大好きなんだねという、なまえの子供独特の声と、それを肯定するような村上の返事だった。それが倒錯した感情ではなく、純粋に部下として尊敬しているのだということは理解できたが、気恥ずかしくなる感情までは押さえられない。
 さっさと中に入ればよかったと後悔しながら今更ドアを開けられずにいると、さらに会話が聞こえてきた。

 先ほどの出来事が邪魔をして、2人の会話もあまり頭に入って来ない。しかし、村上の声で「聖也くん」というのが聞こえて、一条の意識は急に戻ってきたようだった。




「聖也くんが戻ってくる前に、か」



 一条はニヤリと笑うと、踵を返して給湯室へと向かった。
 できるだけ急いで、紅茶をいれて戻ってやろう。そのとき村上はどんな顔をするだろうか。
 なまえと一緒に渡された菓子に合う茶葉を考えながら、一条は高笑いしたいのをこらえて湯を沸かすのだった。




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