「あれ、チビすけじゃねぇの」

「天さん…」

「なに、ひとり?」

「うん」



今日は草野球のために公園に来ていた。チームのオヤジがぎっくり腰だとかで急きょ代打を頼まれたのだが、これが面白いほどによく飛んで笑いが止まらないぐらいだった。麻雀の代打ちなんかやめてプロ野球の代打に転向しようかと思ったぐらいだ。
首尾よく試合を終えてトイレで一息ついて出たところで、なにやら見慣れた子供を見つけたと思ったらなまえだった。そうだそうだ、このキティちゃんの帽子にゴムを縫い付けたのは俺の嫁さんだ。



「珍しいな、なまえがひとりだなんてよ」

「もうおねえさんだから」

「じゃあさ、天さんがキャッチボール教えてやる」

「でも…」

「いいからいいから、嫁さんたちがおいなりさん作ってくれたんだぜ!」



いつもの謙虚さで遠慮するなまえを抱き上げて、俺は野球広場へと向かった。なんだよ、水くせぇな。キャッチボールぐらい朝飯前なんだから遠慮なんて必要ないのによ。
なまえはなんだかまた小難しい顔をしていたが、まぁ、いつもこんな感じだっただろう。公園にひとりで来るというのがちょっと引っかかったが、なまえの言うとおりもうお姉さんなんだから、そんな冒険ぐらいあってもいいかもしれない。


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