「赤木さん」
「なんだひろゆき、そんな顔して」
「どうしたんですかその子」
オレが言う「その子」と言うのは、赤木さんの脚にしがみつくようにしてこちらの様子をうかがっている女の子のことだ。くりくりと大きな子供らしい目を見開いて僕を見上げている。
「あ?言ってなかったか?なまえだよ、なまえ」
「どういうご関係で…」
「なんて言ったらいいんだろうなぁ…養ってるっつーか…まぁ、その辺は気にすんな」
「そこが一番大事じゃないですか!」
赤木さんはいつもそうだ。肝心なところを、一番気になるところをするりとかわして、上手く逃げる。どう見ても訳ありなのは明白なのに。もしかしたら、この子の手前言えないってことなんだろうか。とりあえずオレは赤木さんに貼りついているなまえちゃんに目線を合わせた。
「オレは井川ひろゆき、よろしくね」
「よろしく…」
おどおどしながらも手を差し出して来る姿を見て、僕は小動物みたいだと思った。恐らく握手を求めて差し出された手を通り過ぎ、オレの手はなまえちゃんの頭へと伸びる。
首をすくめて少々緊張しているようだ。過去に何かあったんだろうか。人見知りにしては警戒しすぎだと思う。それでもにこりと笑った顔は素朴で真っ白で、思わずこっちまで笑顔になるのだった。
小動物系
(よぉ、なんだそのちっこいの)
(あ、天さん…っていやいやなまえちゃん、そんなに警戒しなくても…)
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