「トリック・オア・トリート?」

「あぁ、もしお前がハロウィンっつーのを目指してるならな」

「でもさ、やっぱりどっちにしてもデッド・オア・アライブだよね?」

「まぁ…俺はハロウィンには詳しくねぇから…」



こいつ、意味もわからず間違えて使ってたわけじゃないらしい。どうやら意味も知ってた上で一緒だと思ってたみたいだ。よけいに質が悪い。



「でさ、カイジくん、どっち?」

「アライブの方向で」

「あ、大丈夫!弾は入ってないから!」



なまえの右手になお握られたピストルを見ていたらそう言われた。弾の入っていない実銃と弾の込められたモデルガン、どちらを突き付けられた方が幸せだったのだろうか。
ピストルを腰のホルダーに納めて、くるりと1回転した。そして上目遣いで俺を見る。



「ね、かわいいでしょ?」

「へ?」

「魔女だよ」

「あぁ、だろうな」

「似合う?」

「んー、まぁ」



って言うか。それ普段の格好とあんまり変わらねぇだろ。むしろフリルだのリボンだのが付いてない分、普段よりおとなしい格好かもしれない。ああ言う服何て言うんだったかな…。ゴ…。あの類の服を着ているやつらの10人中9人は鏡を見たことがないやつだと思っているが、なまえは珍しい1人の方だ。オーラが一般人と違うのだから当然かもしれないが。



「ほ、本当に!?」

「いや、何でそんなに驚くんだよ」

「好きな男の子にかわいいって言われて喜ばないわけないでしょ!」

「かわいいとは言ってな…」

「カイジくん大好き!」



なまえに抱きつかれたところで、通りがかった隣のおばちゃんと目が合った。今のこいつはただのハロウィンのコスプレをした妹ぐらいにしか見えないらしく、微笑ましい光景を見るような顔をひっさげたまま会釈をして行った。鏡なんか見なくても赤くなっていることがわかるぐらい顔が熱くなった。釈明をしようとしても後の祭りだ。

あっけに取られて玄関先で、しかもなまえと長話をしてしまった自分の愚かさを呪いつつ静かにドアを閉めた。浮かれきったこいつが落ち着いたら、どこから話すべきだろうか。魔女なら魔女らしい攻撃にしないかと言う提案、そもそも銃刀法のこと、それともそれは普段の服装とさして変わらないと言うことだろうか。










神様のいうとおり

(もー、そんなに照れちゃって!)

(あーうん、もう面倒くせぇや…)






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