テレビがテーマパークのイベントの様子を流していた。ただでさえ個性が強いキャラクターたちが、過剰とも言える装飾をして園内を練り歩いている。ハロウィンだなんて騒がれだしたのはほんの何年か前の話じゃないだろうか。

日本人だなぁ、なんて考えてボーッと眺めているとチャイムが鳴った。荷物が届く予定もないし、よくて新聞の勧誘、下手すりゃ受信料を払えなんて輩に違いない。居留守を決め込もうと思って息を潜めていると、もう一度チャイムが鳴った。次は連打だ。

しつこいなぁ。そう思うのと同時に、ふっといやな予感がよぎった。慎重に玄関へと歩みより、ドアスコープを覗いてみる。見えたのは黒づくめの人物。と言っても黒服とやらではない。膝までの黒いワンピースから白い脚が覗いている。どうやらいやな予感は当たったらしい。もう1度チャイムが鳴った。



「わかったわかった、開けてやるから待ってろ」



しつこい来訪者を迎え入れようとドアを開けたその瞬間だった。鼻先に突き付けられたピストル。安全装置が午後の光を反射して鈍く光った。まさか、日本の住宅地でピストルを突き付けられる日が来るとは思わなかった。トリガーにかかった指を見て、次に視線を下ろしてその持ち主を見る。つばの広い尖った黒い帽子のせいで顔は見えない。

ごくりと唾を飲む。ついに俺もここまでか。こいつが俺に付きまとうのをとめなかったのはこう言う訳だったのか。兵藤和尊、あいつは本当に心のないやつだ。

なまえの顔が上がって表情が見えた。思い詰めた表情がふわっと綻びて、そして場違いなほど明るい声で言ったのだ。



「カーイジくん、デッド・オア・アライブ!」



目が点になるとはまさにこのことか。開いた口がふさがらない。いや、開けたままじゃ次は口に銃口を突っ込まれるかもしれない。なんとか口を閉じる。なんで俺はこの状況で生か死かを問われてんだよ。問答無用で死しかないだろ、これは。疑問を晴らすべく、満足そうな笑顔を振りまいているなまえに質問する。













HIT IN THE A.P.T

(ひょっとしてそれ、トリック・オア・トリートの間違いじゃねぇか?)















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A.P.T=ア・パー・ト


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