逃げ出したのはいいけど、普通に走るだけじゃすぐに捕まるのは目に見えてる。いくらバカだって一応、あの黒服なんだからなまえ1人捕まえるぐらい簡単なことだ。つかまってから泣いたってもう遅い。とりあえず少しでも目撃を避けるために、曲がったところにあった部屋に忍び込んで隠れている。たしか今は使われてない部屋で、いろんなものが置いてあるから一目見ただけじゃバレないはず。



「さぁて、どうしよう」



隠れたのはいいけど、いつまでもここにいるわけにはいかない。かといって外に出ても、捕まるだけ…。だいたいどの黒服がこの鍵を追ってるのかなまえはわからない。だってあいつら、みんな似たような格好してるんだもん!1匹みたら30匹、ゴキブリみたいなやつらなんだから。まぁきっともうなまえが鍵を持って逃げてることは知れ渡ってるんだろうけど。



「だいたいちょっと中に入れて料理させてくれればいいだけなのにさ…」



それから、逃げ道を考えた。トイレだって別の部屋だって、どこに逃げたって見つかることは分かり切ってる。だから、見つかったあとにどう切り替えすかを考えた。あ!やっぱなまえって天才かも。おまけにかわいいし、何年かしたらスタイルも抜群になるし、カイジくんも早くなまえの魅力に気付いてくれないかなぁ。そう、お父様のところに逃げればいいんだ。どうして最初からこうしなかったんだろう。いつもはそうしなかったから?なんでいつもはそうしないの?



「あ、お父様に言ったところでどうにもならないからだ!」



ピアノのお稽古、家庭教師、学校、どれもお父様がなまえにやらせることなんだからその本人にいったところで何にもならない。なまえだって逃げたくないけど、ぜーんぶ先生ってやつがバカばっかなんだ。なまえは悪くない…じゃなくって、そうと決まればいつまでもここにいる必要はない、動こう。

そう思っていると、ちょうどドアが開いて黒服が1人入ってきた。1人ってことは、この辺にいるとは思ってないみたい。一応見るか、と言った感じで電気も着けないで中へ進む。光は廊下から差し込むだけで、部屋中を照らすだけの力はまったくない。黒服が奥へ行ったのを見計らって、なまえは廊下へと飛び出した。













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