「ただいまー!」
お前の家じゃねーよ、とかなんで俺のポケットに入ってたはずの鍵をなまえが持ってるんだよ、とかその辺りには突っ込まないことにした。いちいち突っ込んでたら身がもたない。
「早く早く!」
「ところでなまえって料理したこと…」
「もちろんないよ?」
「ですよねー」
まぁそこはとっくに予想済みだ。むしろ料理したことあるって方がありえない。だけどまさか電子レンジを見たことがないとは思わなかった。
「ね、これ本当にチンってなるの?」
「あー、最近壊れかけてきたからなぁ」
「回ってる!なんでライトつくの!?」
日本で、電子レンジでこれだけ喜べるのなんてなまえぐらいだろう。回ってる麺を見て喜んでるなまえは置いといて、冷蔵庫の角に寂しくたたずんでいた玉ねぎと、さっき買ってきたウインナーを切り、フライパンを火にかけた。5回に1回ぐらいしか鳴らないベルが運よく鳴ったようで、なまえが大喜びしている。
「チン鳴った!」
「じゃあこっち持ってきてくれ」
「これ便利だね、なまえの部屋にも欲しいなぁ」
あちあち呟きながら袋の端をつまんでなまえが持ってきた麺を受け取り、袋を破って中身をフライパンにあける。適当に火が通ったところで付属の粉を入れると、またなまえの口から嘆声が漏れた。自分が料理してるところを、じっと見られるというのは何だかやりにくいもんだ。二枚の皿にできあがった焼きそばを取り分ける。
「もうできた?」
「とりあえずはな、でもこっからがポイントだ」
フライパンを軽く拭いて、今度は卵を2つ入れた。
「半熟の目玉焼き乗っけるとまたうまいんだな、これが」
「うわぁ」
「もうすぐだからテーブル拭いてきてくれ」
「うん!」
布巾をご丁寧にしぼった上でなまえに渡す。テーブルを拭くと言うのは、これしかなまえをコンロから遠ざける方法が思いつかなかったからだ。材料を切っているときに思いついたサプライズだったが、ずっと見られてちゃサプライズにはならない。フライパンの端の方にそれを投入した。
「拭いたよ!」
「あぁ、じゃあコップと箸並べて座ってろ。もうすぐだからな」
洗いっぱなしのコップと箸を渡した。運ばせたはいいけど、割れ物を持つとなると不安で目を離せない。まぁ、たいした距離はないんだが…。無事に置いたのを見届けると、俺は最後の盛り付けにとりかかった。
Love Hungry Girl
(ったく危なっかしいなぁって…おー、見事に完熟だ…)
--------------- よそ見してる間に火が通ったようです 焼きそばの麺をチンするのは我が家だけでしょうか
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