「カイジくん!なにこれ!」

「カートだよカート」

「なまえが押す!」

「いや、そんなに買わないからいらな…って聞いてねぇ」



恐らく初めてカートを見たらしいなまえは、カゴを載せないでカートを押していった。カゴを取ってなまえを追う。っていうかあいつがカートを押すのは危険すぎる。どう見ても周りなんて気にしてないのだ。誰かにぶつかるのは簡単に予想できた。



「カイジくんカイジくん、なんかいっぱい並んでるよ」

「ちょろちょろすんな…ってこら話聞け!」

「うへっ!」



絶対ぶつかる、ぶつかるときっと俺が保護者ってことでめちゃめちゃ面倒なことになる、そう悟った。だけどカートを押しているからさっきみたいに手を繋ぐわけにもいかない。そう考えているうちに案の定棚に突っ込みそうになって、思わずパーカーのフードを掴んだ。見方によっては「首根っこを掴んだ」ことになるかもしれない。



「くるひいです」

「自業自得だ」



暴走するなまえを無事にとらえたわけだが、何を買うかまったく決まっていない。考えたんだが、こいつは普段何を食ってるんだろうか。少なくとも、俺の料理が合うような口じゃないと思う。



「何食いたい?」

「カイジくんの作れるものならなんでもいーよ」

「それが一番困るんだよなぁ…」



すぐ作れて、失敗がなくて、味がごまかせそうな何か…。とりあえず卵買っとくか。ん?ふと気が付くとなまえがいない。一瞬だ、本当にあいつは一瞬でいろいろしでかしてくれる。とりあえず狭い店、そう遠くにはいないはず…とあたりを見渡すと、肉売り場の方から俺の名前を呼ぶ声がした。



「ねえカイジくん!赤いよ!これ絵の具味!?」



そう叫ぶ名前の手にあるのは、タコさんウインナーにぴったりな、まさに絵の具で塗ったようなあのウインナーだ。周りの視線が集まる。あぁ、年端もいかないガキを本気で殴りたいと思ったのは初めてだ。なのになんだか体の力が抜けてきた。手に取った卵を落としそうになり、ふっと我にかえる。



「お願いだから大人しくしてくれねぇか…」

「おとなしいって!あぁカイジくん、そんなぐにゃって顔しないで」

「誰のせいだと思ってんだ」

「この絵の具食べたい!」



こいつ脳みそちゃんとあんのか?こんなに話が通じないのはバカだからか、ガキだからか、金持ちだからか…。(多分全部だろうが)
なんかもう、周りの視線でいたたまれない気持ちだ。ただでさえ昼間に、若い男が女の子と2人ってのは目立つのにこの様。一刻も早くこの店を出たい。










I really want to hurt you




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