車に乗っていたはずなのに目が覚めてみると、ベッドの上にいた。
夢を見た。なまえが8歳ぐらいのときの、なまえがお兄ちゃまから離れようと思ったきっかけの話。
お兄ちゃまは昔から、けっこう酷いことをやっていたらしい。でもなまえにはとっても優しかったし、大事にかわいがってくれた。お兄ちゃまの一番はいつもなまえだった。
だけど、お兄ちゃまが中学生になった頃から、学校から帰ってくると出かけることが多くなった。土曜日も日曜日もお出かけで、なまえと遊んでくれることもあんまりなくなった。来週はなまえと遊ぶからな、が重なって、来週が今度になって、次は今度がいつかになるんじゃないかとても不安だった。
お部屋にいると思ったら、そこにはお兄ちゃまだけじゃなくて頭の悪そうな女が何人もいたりした。
どうして、どうしてあんな頭が悪そうで品もない、たいしてかわいくもない女なんかと仲良くするんだろう。どう見たってなまえの方がお兄ちゃまのことをよく知ってるし、大事に思ってるのに。どうしてそんなお金目当ての女なんか。
そんなことを思っていたある日だった。お兄ちゃまの部屋のドアをあけると昼間なのに中は薄暗くて、なまえの特等席だったはずのお兄ちゃまのお膝には、なまえが一番嫌いだった女が裸で乗っていた。そのまま勢いよくドアを閉めて、なまえは走りだした。女はお兄ちゃまの方に顔があったし、お兄ちゃまは女の体で多分ドアがあいたのは見えなかったはずだから驚いたと思う。
でもそれでいいんだ。なまえの驚きはそんなもんじゃない。あの時はその行為の意味はわからなかったけど、本能的になまえのお兄ちゃまが盗られたと確信した。もう、兵藤和也はなまえのお兄ちゃまじゃなくて、ただの兵藤和也なんだ。
お兄ちゃまなんて大嫌い、なまえよりもそんな薄汚い女を大事にするなんて。大嫌い、大嫌い大嫌い! 自分のベッドに潜り込んでそう叫んで、このままじゃ身体中の水が全部なくなっちゃうんじゃないかってぐらい泣いた。泣きながら、こんなに悲しいってことはやっぱりお兄ちゃまが大好きなんだって思った。まだ心のどこかでは昔の、なまえだけを見てくれるお兄ちゃまが帰ってくると思っていた。
この日からだ。なまえがお兄ちゃまを完全に避けるようになったのは。お兄ちゃまがはっきり、なまえなんて大嫌いだ、もう必要ないんだと言ってくれたらきっとなまえは楽になれる。なまえのお兄ちゃまなんてもういないんだから、なまえは期待する必要もなくなるんだから。
だけどお兄ちゃまは未だになまえのことをかわいい妹、なんて言ったりする。なまえに期待させる。させるだけさせてやっぱり膝の上には女を乗せるんだから、本当は、本当にお兄ちゃまは酷い人なんだ。
ビッグ・バッド・ビンゴ
------------ ちなみにイメージは対面座位← ヒロイン視点書くのは珍しいです。そりゃあガチ幼女の視点とか難しいすぎるんで。ツンデレかと思いきやヤンデレになってしまった。
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