四月が終わってもいないのに、その日は真夏の昼すぎみたいな異常な暑さにつつまれていた。すこし前を歩いている名前も知らないおじいさんは、ため息をつきながらひたいをハンカチでおさえている。ハンカチを手に汗をぬぐう人を、今日だけで何人見ただろう。
「 ねえ、ちょっと休んでいかない? 」
公園のすみにある古びたベンチはちょうどいい具合に木陰に覆われていて、照りつける太陽に疲労したからだを休めるにはうってつけだ。ふらつく足をなんとか折りまげて、よいしょとおばさんみたいな声を出してベンチに腰掛ける。棒アイスを片手に持っている仗助くんは、おばさんみたいだとわたしを笑った。はは、おんなじこと、考えてる。
「 仗助くんは座らないの? 」
「 あー……、あぁ 」
わたしひとりが座ってもまだ空きのあるベンチはまるで、ふたりで座ることを推進するかのようにゆったりとしている。けれども仗助くんはベンチにはほとんど目もくれず、真っ黒な学生服の襟元を手でパタパタとあおいでいた。くわえているアイスが水滴となって、乾燥した地面に落下する。まるで夏みたいだと、四月の公園のすみで目を細めた。わたしと仗助くんと出会って、もう一年がたったのだと思うと嬉しいような、さびしいような。
「 お 」
「 ん? 」
「 見ろ 」
あたりだ。アイスのなくなった棒をかかげて、にやりと笑う。それがなにかの合図みたいに、やっぱりわたし、この人のこと好きだな、と思う。
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