それはあまりにも不自然な存在だった。いや、本来ならば彼女こそが自然で、道端を歩いていたってなんの問題もないのだが。ここの住人の知り合いというわりにはあまりにも平凡すぎた。敵の罠なのではとも思ったが、今の自分たちにはもう敵と呼べる敵がいないことを思い出す。しかしそれならば、ますます彼女の存在は不可解である。
「あの、夫がいつもお世話になってます」
そう言って彼女はにこにこと裏のない笑みを見せながら紙袋を差し出した。夫だと?この悪意の欠片もなさそうに笑う彼女の夫が、あいつらのうちの誰かだと?耳をうたがった。彼女の顔を見る。しのぶよりも、まだ若い。しかし、結婚をしていてもおかしくはない。自分たちのなかで結婚している者といえば、わたしと、ディアボロと、ヴァレンタイン。この穏やかそうな女があのディアボロと恋に落ちるとは思えない。しかし一国をたばねる大統領の妻にしては、平凡すぎる。なんだ。どうなっている。いったい誰の妻なんだ。そもそも住所を間違えてるんじゃないのか。目が回りそうなほど思考回路をめぐらせていると、奥の部屋から、のそのそとDIOが半裸のままやってきた。寝起きらしく、無表情に、ぼーっと、玄関先にいる彼女を見つめている。まずい。彼女は見たところ日本人のようだ。いきなり半裸の外国人が奥の部屋からでてきたら、あわてて帰るに違いない。警察に通報したりしないだろうな。困る。この私の生活を騒々しくされるのは非常に困るぞ。かわいそうだが彼女には悲鳴をあげる暇もなく消えてもらおう。
「あっ、DIOさま!」
にこぉ、と少女のように正直な笑顔で彼女が言った。とたん、それまで寝起きでぼんやりしていたDIOは真紅の色をした目をカッと見開き、弾丸のような速さで彼女との距離を縮めた。
「ナマエ、どうしたのだ」
「DIOさまに会えないのがさびしくて来ちゃいました」
「年末には戻るといっただろう」
「年末まで離れ離れなんていやだったんですー」
「かわいいやつめ」
きゃっきゃっと指を絡めあう二人を前に言葉はでない。なにが起こっている。
「あぁ、吉良、紹介しよう。私の妻だ」
ミスマッチにもほどがあるだろう。





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