いったいどういうスピードで仕事を終わらせてきたのか、ジョルノが夕暮れどきに家に帰ってくるなんてと耳をうたがった。しかし玄関扉のひらく音のあとに続く静かな足音はまぎれもなく愛しい彼のものでわたしが間違うはずなんてない。二日ぶりだ。うれしくなったわたしは、寝転がっていたソファーから飛び起き廊下をかけてゆく。彼は腕をひろげ、廊下でわたしを待っていた。洗われたみたいに色素の薄い瞳と目があったとたん、華奢なその腕にムギュウと抱きしめらる。
「ジョルノ、くるしい!」
わたしの言葉を聞いているのかいないのか、ジョルノはがっちりとわたしの体をホールドして大きく深呼吸をした。
「あぁ、二日ぶりのナマエの香り……」
ちょっと気持ち悪いところはあいかわらずなので、おかえりなさいのキスをするわたしの気分はごっそりと削ぎ落とされてしまった。わたしのおしりと太ももの付け根をさわさわと撫でながらキスを待っている彼から、おもわず顔をそむける。数センチ前まできた美しい顔を両手で押し返すと、ムッとした顔で睨まれてしまった。
「おかえりなさいのキスは」
「そ、そんな気分じゃなくなった……」
「無駄ァッ!!」
「晩ごはんつくらないと!」
迫りくるジョルノの唇をかわし、するりと彼の腕をすりぬけてキッチンへむかう。我ながら神回避である。買い出しをお昼すぎにすませておいたので、いまなら大体のものならつくれるだろう。まだ新しくてぴかぴかなキッチンで料理をつくるのは楽しい。お気に入りの水玉模様のエプロンを身につけて、うでまくりをすると気分はもうすっかり新妻だ。のそのそと後ろをついてくるジョルノの顔はあきらかに拗ねているときの顔だけれど見なかったことにした。
「ジョルノ、食べたいものはある?」
「ナマエ」
わたしの肩のうえに顔をのせて、後ろからぎゅうと抱きしめられる。「僕はこんなに好きなのに、」普段の凛とした声がうそのように弱々しかった。彼の左手がにぎるわたしのエプロンは、くしゃりとシワをつくる。逆の手はわたしの胸をわしづかんでいる。
「こらジョルノ」

( 別館サイト 憂鬱より )





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