ココア




俺は甘いものが好きだ。男のくせに、と誰かは言うけれど、美味しいものは美味しい。でも一番好きなものは、


「勘ちゃん、遊びに来たよ」


隣に住む幼馴染の名前、とはいっても年齢が4年も違うため兄弟のようだとよく言われる。だって生まれた時から一緒だし、名前のことなら誰よりよく知っている。そして、俺はそんな名前が大好きだ、もちろん兄弟愛とかではなく、男と女の恋愛感情で。おい誰だ今ロリコンって言ったやつ。


「お帰り、名前」
「今日大学なかったの?」
「今日は2限で終わり、学校どうだった?」
「楽しかったよ」


俺は、いいお兄さんとして宿題を教えて、夜まで一緒に遊んだり話したり勉強したりする。

(俺と一緒の大学行きたいんだって、本当に可愛い)


「そろそろ休憩入れる?」
「やった、勘ちゃんのココア飲みたい!」
「名前それ好きだね」
「勘ちゃんの愛情たっぷりだもんね?」
「そのとーり」


そりゃあ名前のためですから。でも、純情なお前はまだ俺の下心に気付かないでくれよ、そんなに足広げて座るな。さり気無く名前の足に触れて、閉じなさいと言い聞かせると、お母さんみたい、と帰ってきた。ばかやろう、お母さんは足触らないだろう。


「でも勘ちゃんのココア、普通のものより甘いよね?」
「だって俺が甘いもの好きだし」
「本当好きだよね」


ああ好きだよ、大好き。三食糖分でも生きていけるぐらい。


「一番好きな甘いものってなあに?」
「一番、」
「そう、いちばん」


名前は俺の足の間に座って、ココアに息を吹きかけている。そっとお腹に手を回して抱き寄せた。なんだこいつ、ココアではない感じの甘い香りがする。


「いちばん、は、」
「ケーキ?キャンデー?」
「名前」
「残念、私は食べられませーん」


本当は?何て残酷なことを言う。だから本当だって、食事的な意味でも、性的な意味でも。


「残念、食べられるんですー」


油断しきっている名前の頬に軽く噛り付いた。吃驚してこちらを振り返る名前にいやらしい笑みを浮かべてご馳走さまと言った。


「…じゃあ、早く食べてよ」
「まだ早い」
「いくじなし」


こっちを向いて膝立ちの状態で額を合わせる。だからまだ子供なんだよ、我慢ができない。ごめんね名前、大好きなものは最後まで取っておいて、味わって食べるタイプなんだよ俺。だからさ、


「だから早く大きくなりな、名前」




好物はきみ




(そういって口づけを一つ)
(俺もまだまだ子供なんだなぁ)



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