青春ひとさじ
∴あおい様 キリリク





『あ、ヤナとハルくん!』


帰る前に名古屋だけ見てこう、と鶏小屋に寄ると、ヤナとハルくんがいた。
最近二人なかよしさんだねえ!と笑うと、ヤナもつられて笑う。ハルくんはそ、そうか!?俺とヤナともだちに見えるか!?と照れていた。はははっ、面白いなあ、ハルくん。


『あ、そうだ、三人で一緒に帰らない?』

「いや、俺はシズクと帰るんだ。申し訳ないな」

『あ、そっか大事な彼女がいるもんね!思いっきりらぶらぶしてきな!じゃあヤナ、一緒に帰ろ!』


おう!と走ってシズクちゃんの元へ駆けていったハルくんを見届けて、満足げに頷く。よしよし、シズクちゃんも抱きしめられて照れてる。よしよし。さ、行こうかとヤナの方を向くと、困ったようにヤナは口を開いた。


「…でもなまえちゃん、ササヤンが怒らないかな?」

『んー、まあ彼氏だけど、本人もよく女子と喋ってるしいいんじゃない?』

「ならいっか〜!」


ケラケラ笑うと、安心したようにヤナも笑う。そうそう、やっぱりヤナは笑ってる方がいいよ!
学校での有名なウワサだとか、かわいい女のコの話とかをしながら歩いていると、校門でササヤンを見つけた。見つけたっていうか、私の方に来てる?ヤナもあ、と立ち止まる。


「ちょっとなまえ、なんでヤナと2人なの?」

『名古屋の小屋で会って一緒に帰ろって言ったんだよ〜』

「…ヤナ、なまえはオレのだから」


私がヘラヘラ笑っていると、ササヤンは私の手を引いてどんどん歩いていく。ちょっと、速いよ!と言ったところで、やっと足を止めてくれた。
いやあ、ササヤンもけっこう力強いんだねえ、と言おうとしたところで、ササヤンの拗ねたような顔に気づく。うわ、いつもだったら笑うけど、自分に対してだと笑えない。…ていうかササヤン、もしかして、


『怒ってるの?』

「…そーだよ。ヤナと二人で帰ろうとしてるから」

『いや、はじめはハルくんも一緒に帰る予定だったんだよ!?でも、シズクちゃんがいるから無理で、』

「だから、…そーゆー問題じゃないんだってば」


はあ、とため息をつくと、ササヤンはまた歩き出してしまった。まあ、さっき私が速いって言ったからかゆっくりだけど。優しいなあ、ササヤンは。優しいから、友達も多いんだろうなあ。
そんなことを考えていると、ササヤンがどうして怒ったのかはっと気づいた。


『…もしかして、ヤキモチ、妬いてくれたの?』

「…かっこわるい彼氏で悪かったね。あと、なまえ気づくの遅い」

『かっこわるくなんか、ないよ。…私、すごい嬉しい』


え?と、怪訝そうな顔をするササヤンに、にぃっととびっきりの笑顔を見せたあと、口を開く。


『だって、ササヤンはいっつも余裕だと思ってたから、私と一緒の気持ちでいてくれてるんだって思って!えへへ、ササヤンのこともっと好きになっちゃったよ』


返事が返ってこなくて、ササヤン?とササヤンの方を向くと、そっぽを向いていた。あ、耳まで真っ赤だ。照れてるササヤンがかわいくて、好きだよともう一回言うと、バカ、と返されてしまった。


『バカじゃないし!ひっどい!』

「はは、バカでしょ」


なんて手をつなぎながら帰るのもいいかな、って。



青春ひとさじ
(なまえはもっと危機感もってね)
(…放課後は気をつける!)
(放課後だけじゃなくて。)






あとがき
嫉妬するササヤンくん…難しい。
ササヤンくんは怒ると面倒ですよねw
ああ、ほんとササヤンくん書けなくなってるなあ。
ほんとうにもうしわけないです。


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