この恋、何色。 『下柳くーんっ!』 タタタッ、と走っていって彼氏である下柳くんに後ろから抱きつく。 野球部はいつも練習がゆるゆる、というか今は休憩時間らしい。 「わっ、名前ちゃん!?」 『えへへー、下柳くんの匂いがするー!』 「いいよな、苗字さんに抱きついてもらえるなんて」 「ワハハッ、ヤナ真っ赤じゃん!」 ヒューヒュー、と他の野球部のメンバーに言われて私もなんだか照れてしまう。 下柳くん真っ赤なんだ、かわいい…。 見たい好奇心に勝てずに、名残惜しいけど腕を離して下柳くんの前に行く。 『ふふ、ほんとにトマトみたい。かわいい…』 つい声に出してしまうと、下柳くんはプシュー、と音が出そうなくらいさらに真っ赤になった。やっぱりかわいい。 しかも、他の野球部のメンバーも下柳くんを茶化している。 「だだだだって名前ちゃんが抱きついてくるからだよ…!」 「ヤナの方が女子みたいじゃん!」 「うるさいな〜も〜!」 ぶー、と頬を膨らませる下柳くんは女の私よりもきっと可愛い。 いや、きっとじゃなくほぼ100%だなあ…。 『ねえ、瀬田くん!』 「ん?どうしたの苗字さん」 『下柳くん抜けても大丈夫かな?』 「ああ、そういうことなら大丈夫」 瀬田くんに許可も貰ったから、え、えなんの話!?とあたふたする下柳くんの腕を引っ張ってグラウンドを出る。 ラッブラブー、なんていう声もスルーして突き進んだ。 校門を出たとき、下柳くんが口を開いた。 「ちょ、ちょっと名前ちゃん!?」 『私の家行こ?』 そう言って、下柳くんの腕細いなあ、ていうか細身だなあいいなあと思いながら腕を離すと、下柳くんの前に立って、彼の顔を見つめた。 わ、下柳くん顔赤い。 そんなことを思いながら彼の頬に手を伸ばす。 『えへへ、赤くなってるよ、かわいい』 「…名前ちゃん」 伸ばした手を下柳くんに掴まれて、その男らしい手に驚いてしまう。 滅多に見ることのない下柳くんの真剣な表情にどきり、と胸が高鳴ってしまって、つい下を向いた。 「にげないで、俺のこと見て」 ぐい、と両頬を掴んで前を向かせられる。 少しだけ赤くて真剣な下柳くんに自分の顔が少し赤くなるのを感じるけれど、目を逸らせずに下柳くんを見る。 「よく俺のことかわいいって言うけど、俺は名前ちゃんのほうがかわいいと思う」 『…下柳くん、』 「俺もやきもちとか妬くし」 実際に瀬田と話してるくらいでやきもち妬いちゃったんだ、かっこわるいでしょ?と困ったように言う下柳くん。 『…かっこわるく、ないよ』 「え?」 『下柳くんはたしかにかわいい、けど、かっこいい…よ』 今なんか、ほら、すごいドキドキしてるよ。 下柳くんにじゃないとこんなに心臓煩くならないもん。 「でも、俺のことかわいいって思うんでしょ?」 『…うん』 「俺も男だよ。名前ちゃんみたいにかわいい子といると色んなことしたいとか思っちゃうし、家に誘われたらそういうこともしちゃうかもしれない」 その言葉に真っ赤になった私に、下柳くんは顔を近づけてきた。 「ほら、こうやって」 ちゅ。 「ちゅーとかもするし」 あれ、おかしいな。 別に下柳くんとのキスなんてはじめてなわけじゃないのに。 私と同様赤くなっている下柳くんの顔を見つめると、下柳くんは照れ臭そうに笑う。つられて私も笑顔になった。 この恋、何色。 (下柳くん、だいすき) (…っ!!もう俺家で我慢できるかわかんないからね!?) (えへへ、いいよ) (も〜っ…!!) (title:確かに恋だった) |