きみに恋してはじめて知ったこと 「ナマエって記念日何してもらったの?」 『え?記念日?特に何も』 「あら、ポッターって記念日とか好きそうなのに、意外だわ。まあ、ナマエとしてはその方が嬉…」 「ひどいなあ。心外だよナマエ!!」 『うわっ』 リリーと理想の記念日についてガールズトークしていると、面倒な眼鏡が現れた。いや、私の彼氏なんだけどさ。なんかもうストーカーかなって感じにしつこいしウザ…じゃない面倒。 思わず顔を顰める私とリリーをよそに、ジェームズは満面の笑みだ。 「バラの花束をプレゼントしたじゃないか!!イヤリングも贈ってその日は濃い夜を…」 『行こうリリー』 「ええ、そうね」 「ちょっとナマエ!?!?!?待とうよそこは!」 無視してスタスタと足を進めると、目の前にジェームズ以外の仕掛人三人が現れた。ちょ、待ってなんで通せんぼしてくるの!?後ろからジェームズ迫ってるんですけどぉ!? 『どいて!ってあれリリーは!?』 「エバンズに罪はないからね、通したよ」 『リーマスもリリーもひどい…』 必死になって突き進むと、シリウスに腕をがしっと掴まれた。 「捕まえないと俺殺されるから!!!」 「…シリウス、僕のナマエになに触ってるんだい?」 「ヒエッすみません!!!!!」 秒速で私の腕を離したシリウスと、そのおかげで離れた私の腕を組むジェームズ。 もちろんジェームズは腕を離してくれるはずもなく、私を半ば引きずるようにして寮の方へと連れて行った。 シリウスは絶対にゆるさない。怒りを込めた目でシリウスを見ると、ヒッ、という声が聞こえた気がした。 ∵ ∴ ∴ 「やっと二人きりだねナマエ!」 『その言い方だと私も望んでたみたいだけど、私はリリーといたかった』 「僕はずっとナマエといれたらいいなと思うよ。さあ、ところでどうして君を僕の部屋に連れてきたのか分かるかい?」 『いや全然』 にこにこと一見人のいい笑みを浮かべるジェームズ。だけれど、中ではなにを考えているのか全然予想もつかないから怖い。 そんな笑みからちょっと視線をずらしながら答えると、ジェームズは突然私を抱きしめてきた。 あたたかくて、ここちよい。彼の、すこしごつごつとした体に包まれるのは、好きだった。顔を上げると、眼鏡の奥のはしばみ色の瞳と視線が交わる。ジェームズの瞳は、光の加減で青くなっていた。きれい。 そのまま、私の唇と彼の唇が触れた。 「好きだよ、ナマエ」 『……私もジェームズのこと嫌いじゃない』 「ワオ、レアだね!」 『で、なんでこの部屋に?』 「それはもちろん、」 耳元で囁かれた言葉に、ジェームズを思いっきり殴った。 きみに恋してはじめて知ったこと (恋って、たのしいものなんだって) (2016.3.6) (title:魔女) |