美女になれたら本望
『リリー』

「なあに、ナマエ」


読んでいた本から目線を上げ、リリーはこちらに顔を向けた。優しく私の名を呼ぶリリーに、ついうっとりしてしまう。


『リリーって、すごく綺麗だよね』

「突然どうしたのよ。ポッターみたいなこと言って」


クスクス笑うリリーもまた、綺麗だ。
リリーは分かってないなあ。ポッターは他の人より正直なだけで、別に気持ち悪くも変でもない。だって、私も、リリーの友人も、みんなきっとポッターがいつもリリーに言うようなことを思っている。


『私さ、ポッターに共感しちゃう』

「あら、ナマエまで私が夜空を照らす月のようだ、なんて言い始めたら大変だわ」

『さすがにそんなこと言わないよ?…でもさ、ほら、このサラサラの赤毛も』


私はリリーの髪を手櫛で解くと、次は彼女の頭をとんとん、と人差し指で軽く叩いて言葉を紡いだ。


『賢くて文句の言いようがないココも』


次に私は彼女の瞳をじっと見つめながら、言う。


『吸い込まれそうなくらい深い緑をした瞳も』


そして、リリーに笑いかけると、彼女はほんの少し頬を染めた。
ああ。可愛い。なんでこんなに綺麗なんだろう。


『それから、この柔らかな唇も』


私は、リリーとしばらく(実際は一瞬だったのだろうけれど)見つめ合った後、彼女の程よく薄く形の良い唇に口づけた。
唇を離すと、リリーは少し驚いたような表情をして、私を見ている。…ああ、私もリリーみたいな顔になれたらなあ。でもそんなの叶うわけないから、せめて。


『リリーの全部が、綺麗でかわいくて、好き』

「…っ、ナマエ、」

『私と、恋人になってくれませんか』


リリーは頬を紅く染めて綺麗な顔を可愛くしながら、小さく頷いた。



美女になれたら本望
(順序が逆よ)
(ごめんね、リリー)
(でも嬉しかったわ)


(title:パニエ


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