素直になってみた。
私ははあ、と白いため息を吐いた。


『…寂しすぎ』


なんで私はぼっちホグズミードしてるんだ。

カップルだらけのホグズミードで一人はつらい。
こう見えてナマエちゃんガラスのハートだよ!?


『…ピーターのばか…』


ぽつりと呟いた私の声は、騒がしい周りの音に掻き消されていく。

本当は彼氏であるピーターとここで今現在デートしているはずだったのに…。
勉強が苦手な彼は小テストで赤点を取ったらしい。


『はー、もう寒すぎ!乙女が来るところじゃない!』


叫ぶとさすがにまわりの人にぎょっと見られた。
もうなんだか寂しいを通り越して虚しくなってきて、うつむく。

何時間も待たずに帰ればいいのに、と思うかもしれないけど、彼からのはじめてのお誘いだったから。


『…どれだけマクゴナガルに絞られ…』

「ご、ごめんナマエ…!」


ため息をつきながらまた愚痴を吐こうとすると、息切れしたピーターの声がして、思わず前を向いた。


『ちょっとピーター、遅すぎ!』

「ハァハァ…ごめんねっ…、実技もやらなきゃいけないなんて知らなくて…っ」

『言い訳しか言えないの!?』


違う。ピーターは別に悪くない。
勉強が苦手なのは分かってたし、私が勝手に待ってたのに。

嫌味しか言えなくて、ピーターを困らせている、素直じゃない自分が嫌だった。


「あ、あの…ナマエ…!」

『なに?』

「僕…いや、なんでもないや…ごめん」


そんなの気になるじゃん、と制止も聞かずに
ピーターがあさっていたかばんを奪うと、
その中にはハニーデュークスのラッピングされた箱があった。


『…チョコ?』

「え、えっと…僕…お詫びと…いつもありがとうっていう意味で期間限定チョコ、買ったんだ…」

『私が欲しいって言ってたやつ…?』

「うん!あっ、いらなかったら捨てていいよ…!」


手渡された、チョコ。
結構な値段もするしもう期間が終わるから、と私は諦めていた。

ぽたり。
涙の粒が箱に落ちて、ラッピングに染み込む。


「ナマエ!?そんなに嫌だった…?ごめ…」

『違う…っ』

「え?」

『違う、嫌なんじゃなくて…っ、う、嬉しくて…』


ピーターはしばらく驚いたように目を見開いていたけれど、私の言葉を理解したのかにへら、と笑った。


「だいすきなナマエに喜んでもらえてよかった…」


心底嬉しそうに言う彼がいとしくてたまらなくて。


『…私もだいすき、ピーター』



素直になってみた。
(ピーター真っ赤になりすぎ)
(普段ナマエそういうことあんまり言わないから嬉しくて…)
(そういうとこ好き。…あ、また真っ赤)




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