[菜緒]


隣でずっとリズムゲームをしている優。
だから全然構ってくれない。
今イベント中らしくて久しぶりに仕事が早く終わったから、泊まりに来たのにずっとこれだ。


「なあー!まだ終わらんのー?」

『んー?まだー。』

「ずっとやってるやん!」

『あー!ミスったじゃん!』

「菜緒とゲームどっちが大事なん?」

『は?』

「今、めんどくさって顔した。」


自分でもわかってる。
めんどくさいこと言ってることぐらい。
でも、付き合ってるんだから2人の時間も大切にしてほしいっていうのが本音。


『拗ねてんの?』

「別に拗ねてない。」

『ベタベタくっついた方がいい?』

「それもそれでなんか怖い…けど悪くないかもなあ。」

『じゃあ、ここきてー。』


そう言いながら膝の上をポンポンの叩く。
優の言う通りに膝の上に座る。
もちろん向かい合って。


『あ、こっち向くんだ。』

「当たり前。」

『ゲームに嫉妬した菜緒ちゃん。』

「うるさいなあ。」

『私の事が大好きな菜緒ちゃん。』


ニコニコしながらそう言っている優を見ていると、さっきまでのイライラがあっという間にどっかへいってしまう。
好きって不思議だ。


『一緒にお風呂入る?』

「もう入った。」

『一緒に寝ようね?』

「しゃーないなあ。」

『菜緒、目つぶって?』


だいたい何されるか分かるけど、毎回ドキドキするこの瞬間。
そしてやっぱり唇に柔らかい感触。
ゆっくり目を開けると、またニコッと笑っている優。


「ずるいなあ…」

『もう一回する?』

「はよお風呂入って。」


はーいと言ってお風呂に向かう優。
優を待っていると、テーブルに置いてあった携帯が鳴った。
パッと付いた待ち受け画面をなんとなくみると、この前まで2人で撮った写真だったのに変わっていた。


『この菜緒ちょー可愛いよね。』

「びっくりしたっ!これブログ載せてたっけ?」

『ううん。丹生ちゃんが送ってくれた。』

「丹生ちゃんか…」

『2期生の前じゃこんな顔するんだね。嫉妬しちゃうなー。』


ドライヤーを持ってきて目の前に座った優は、コンセントをさして乾かせと言わんばかりにドライヤーを渡してきた。


「パワハラや。」

『違う。恋人同士のスキンシップ。』

「はい、終わり。短いからすぐ乾いてええなあ。もう寝る。」

『えっ!もう寝るの?』

「明日学校やし。久しぶりに早く寝れるから寝不足は嫌。そもそもゲームやってる方が悪いんやろ。」


電気を消して背中を向けると情けない声を出して抱きついてくる優。
歳上なのにちょっと怒るとすぐに弱くなる優が愛おしい。


『なーおー。』

「寝る。」

『おやすみのちゅーして。』

「それはセクハラやな。」

『付き合ってるからセクハラじゃないもん。』

「おやすみー。」

『あーもう明日の撮影頑張れない。』

「しゃーないなあ。」


向き合うとすぐに近づいてきた優。
ツンツンしたり甘えてきたり無意識にツンデレを、完璧に使いこなす優には一生敵わないんだろうなあ。
好きになってしまった私の負けだ。








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