[優]
一目見た時にビビッときた。
世間はこれを一目惚れというんだろう。
だから今日も想いを伝える。
「好きです!」
『ごめんなさい。』
若月『ははっ!また振られてるー!』
玲香『懲りないねー。何回目?』
「まだ48回目!」
若月『もう48回?なぁちゃんに迷惑だからそろそろやめなよ。』
生駒『もう諦めなって。もう1年以上経ってるじゃん。』
「やだ!七瀬、明日も告白するからね!返事考えといて!」
『明日も変わらんけどな。』
若月『もう明日の分も振られてるじゃん!』
次の日ももちろん告白。
そしていつものように一言で断られる。
1ヶ月に1回、2週間に1回、1週間に1回、3日に1回とだんだんスパンが短くなり、そして次でもう50回目。
これだけアピールしても一語一句変わらない返事。
キリもいいし次で最後にしようかなあ。
次の日、教室の隅でみんなに囲まれている七瀬を見ながら、いつ言おうか悩んでいると玲香に声をかけられた。
玲香『あれ?今日は言わないの?』
「んー?言うよ。いつ言おうかなって考えてたとこ。」
若月『いつ言っても同じなんだから、今日の分早く済ましちゃいなよ。』
「今日で50回目なんだけど、最後にしようと思っててさ。」
玲香『えー!なんで!いいの?』
若月『そうだよ!ちゃんと毎日伝えればなあちゃんの気持ち変わるかもよ?』
「なんか昨日、家で考えてたらもういいかってなってきちゃって…」
苦笑いしている2人。
いつ言おうかな…
最後はベタに放課後の体育館裏?
それとも今日は天気いいし、屋上に呼び出す?
んー、それともいつも通りみんなの前で言って終わる?
どうしよっかなー。
そんな事を考えてたらあっという間に1日が終わり、帰る時間に。
「七瀬ー。ちょっといい?」
『うん。』
七瀬と一緒に来たのは屋上。
体育館裏に行くより近いし、最後はみんなの前より2人がよかったから。
ただそれだけの理由。
「あのね、今日で告白するの最後にしようと思う。今までたくさん迷惑かけてごめんね。」
『…』
「好きです。」
『うん。だから?』
「だ、だから…?」
『好きなのは知ってんねん。何回も言われてるから。』
「えっと…」
『付き合ってくださいやろ?』
思いもよらぬ展開に頭が全然ついていかない。
これってもしかして…
もしかして七瀬と付き合えるんじゃ…
「好きです!付き合ってください!」
『ごめんなさい!』
「えー!今の完全に付き合う流れだったじゃん!」
『あははっ!』
「何笑ってんだよー!」
『あと50回。そしたら考えたる。』
あと50回ってことは、100回目ってことだ。
七瀬も実は数えてたんじゃ…
「また1日に何回も言うのあり?」
『なしに決まってるやろ。』
「てことは毎日伝えてもあと1ヶ月半くらいかかるじゃん!」
『ちょうど夏休みが終わるくらいやな。』
そう言って笑っている七瀬。
完全に遊ばれている。
でも絶対に無理だと思っていたあの七瀬と少し距離が縮まった事が何よりも嬉しい。
「夏休みも毎日連絡するから!」
『えー。返事せなあかん?』
「見たよっていう反応があれば1回にカウントする!」
暑いから帰るって言う七瀬の後を追いかけて教室に戻ると、いつも一緒に帰っている玲香達の姿はない。
『優、駅まで帰ろ。』
「手繋ぐ?」
『繋がん。』
「ですよねー。」
残り50回の告白でまだまだ空いている七瀬との距離を埋めていかなきゃな。
夏は始まったばかりだ。