[飛鳥]
日付もだいぶ前に変わり眠たい目をこすりながら家に帰り、真っ暗な部屋の電気をつけるとソファからはみ出している足がパタパタ動いているのが見える。
『お帰りー。』
「起きてたんだ…」
『大好きな飛鳥ちゃんが頑張ってるのに寝れないよー。』
「電気ぐらいつけなよ。てか、寝ててよかったのに。」
『明日午後からだからさ。飛鳥もでしょ?』
「うん。」
いつも私のスケジュールを把握している優。
お疲れ様と言って、ソファから立ち上がった優はギュッと抱きしめてくれる。
「離れろー。」
『疲れてるっしょ?癒してあげよっか!』
「お風呂はいってくるから離して。」
『早く出てきてね?めっちゃ眠いの!』
「うるさいなぁ…」
優から離れてお風呂に向かい、1人の時間を満喫する。
優は羨ましいぐらいに自分の心に素直だ。
愛情表現も恥ずかしげもなく表してくれる。
私は正反対。
恥ずかしいから基本的に自分から寄って行ったりする事はしない。
ちゃんと好きと伝えたのは付き合う時に1度言ったぐらいかもしれない。
それなのによく見捨てられず1年もやってこれたなあと思う。
お風呂から出るとソファに座ってユラユラしながら寝ている優。
「そんなに眠いならベッドで寝なよ。」
『飛鳥が寝るなら寝る…』
「歯磨きしたら寝るから、先にベッド行って。」
『飛鳥と行く。』
「もう…」
歯磨きを済ましてすぐに一緒にベッドへ向かう。
するとすぐに規則正しい寝息を立てて寝てしまった優。
そういえば朝から雑誌の撮影してたって言ってたっけ。
自分だって疲れてるくせに…
寝ている優をギュッと抱きしめる。
全く起きる様子のない優に軽く唇を重ねる。
「いつもありがと。好きだよ…」
なーんて寝てる時に言ってもね…
ちゃんと伝えなきゃいけないってわかってるけど、絶対言えないから。
すると突然開いた目。
ニコニコ笑っている優。
やられた…
「いつから起きてたの。」
『飛鳥がギュってしてくれた時。』
「寝たふりかよ。」
『一瞬寝てたよ。飛鳥が何もしなかったら寝てた。だから寝たふりじゃない。』
「もう寝る。おやすみ。」
『えっ、ねえ、もう一回言って。』
「おやすみ。」
『違うそれじゃない。』
きっと優が求めているのはたった2文字のあの言葉。
なかなか言わない私を寝させないかのようにユラユラ揺らしてくる優。
「寝させて。」
『んー!もう!』
「腕ー。」
優の腕を伸ばして腕まくらを無理やりさせる。
するとギュッと抱きしめられて、さっきとは逆の状況。
優の首元にそのまま顔を埋める。
『飛鳥、好きだよ。』
「うん。」
『大好き。』
「知ってる。」
『もうダメかと思ってた。』
「…」
『ほんとは今日、鍵返しに来たんだ。』
「えっ…」
もう返さないけどねと笑っている優。
お互い個人仕事でなかなか会えなくても、グループの仕事で一緒になれば横にいてくれた。
それが当たり前になってた。
優の抱えてた不安を何も知らずに。
「嫌だ…離れていかないで…」
『うん。』
「たまにちゃんと伝えるから…」
『1年に1回?』
「それは…わかんない。」
『ふふっ まぁ、そっちの方が飛鳥らしいか。』
おやすみと言って寝てしまった優。
なんでこんなに優しいんだろう。
なんでこんなに想ってくれるんだろう。
これからも隣で笑っていてくれるのが優でありますように。