[理佐]
ピンポーンと何度もなる音で目が覚め、重い体を起こしふらつきながら玄関の扉を開ける。
「来なくていいって言ったのに…」
『早く終わったから来ただけだよー。』
「うつるから帰りなよ。」
『大丈夫大丈夫。』
そう言いながらビニール袋を片手に強引に部屋に上がりこんできた優。
早く寝なよと促され、起こしたのは誰だよとツッコミたくなるけどそんな元気もなくもう一度ベッドに倒れこむように寝転ぶ。
『熱は?』
「だいぶ下がった。」
『そっか。氷枕持ってきたから頭あげて?』
「そこまでしなくて大丈夫なのに…」
『よし。あとは…冷えピタ?』
「自分で貼れる。」
『はい、前髪あげてー?』
「…」
『おっけー。ここに飲み物置いとくね?ご飯は?食べる?食べるならお粥作るけど。』
「いらない…」
わかったよとニコッと笑って頭を撫でてくれる優。
こんな優見たことない。
そもそもこんな気がきくタイプだったっけ…
てか料理できたっけ…
なんて考えていたら寝ていたみたいで、外はもう暗くなっていた。
帰っちゃったかなと思いつつリビングに行くとソファに座ってテレビを見ている優がいた。
「まだいた。」
『まだいるよ。』
「もう大丈夫だから帰りなよ。優、明日朝からでしょ?」
『理佐はレッスンだけ?』
「うん。昼から。」
『そっかそっか。あっ、熱は?まだある?』
「さっき測ったら微熱まで下がってた。」
『よかった。もう一回冷えピタ変えた方がいいよ。』
冷蔵庫に入っていた冷えピタを取りに行くと、優が来る前までなかった鍋が置いてある。
中をみるとお粥だった。
食べないって言ったのに作ってくれたんだ…
『食べる?』
「食べようかな。」
『じゃあ座って待ってて?すぐ温めるから。』
「もうほんとに大丈夫だから、遅いし帰りなよ。」
『泊まる。』
「やだ。」
『泊まる。もうお風呂入ったもん。』
しばらくすると鍋ごと目の前に置かれてスプーンを渡されるかと思いきやそのまま優がすくう。
そしてニコニコしながらあーんと言って近づけてきた。
「いい。自分で食べれるから。」
『やだやだ。あーんしたいー!』
「はぁ… ん。美味しい…」
『でしょ!でしょ!愛情たっぷりだもん!すぐ元気になれるよ!』
「ねえ、食べづらいから離れて。」
『あー、理佐が強めのツンツンに戻っちゃったよー。』
「ありがとね…」
そう言うとパッとこっちをみて満面の笑みでどういたしましてと言った優。
食べ終わった後も片付けまで全部やってくれて、いつもみんなにも甘えてばっかりの優の意外な一面が見れた日になった。
『理佐、まだ寝ないの?』
「もう眠たいんでしょ?」
『うん。一緒に寝よ?』
「しょうがないなあ。」
ずっと好きって伝えてくれている感じがするし、やっぱりいつもの優が好きかも。
みんなが知らない優を知ってるのは私だけで充分だ。